患者さんの情報広場 治療体験記

完治は私の卒業証書 〜福岡県 Tさん(45歳)

 スラリとしたパンツルックに、長い髪がとてもエレガントなTさんは、ご主人と2人でレストランを営んでいらっしゃいます。夫婦二人三脚の仕事は、もう15年ほどになるとか。20歳と17歳の息子さんを含めた4人家族。お弁当作りや、部活のあとの洗濯物など、家事にもフルスイングの毎日です。


まるで晴天のへきれき。

 病気が発覚したのは、2005年の夏、43歳の時です。
 自営の仕事なので、病気をする暇はないし、病気になっても病院に行く暇がないので、普段からできるだけ予防して病気にならないようには気をつけていました。ですから、行政の定期健診にはちゃんと行くようにしていたのですが、2005年の8月の健診で、肝機能の数値が、GOT 119、GPT 154と、ありえないほど高くなっていたんです。それで、10月に再検査をして、C型肝炎だということがわかりました。
 それまで、何の自覚症状もなく過ごしていたので、本当にびっくりしました。肝機能の数値が上がったのも、お酒が大好きで毎日ビールをかなり飲んでいるので、「今年は飲みすぎたのかなあ」と思っていたくらいで。輸血などをしたこともなく、感染の心当たりもありません。C型肝炎についての知識もほとんどなく、それまでは全く「ひとごと」でしたから、姉から「放っておくと肝がんになるおそれもあるんだよ」と言われて、本当にショックでした。「何で私だけが…」と思い、悲観的になりましたね。

ペグインターフェロン・リバビリン併用療法との出会い

 ショックの時期はしばらく続いたのですが、この地域で肝炎を専門となさっている先生に紹介され、そこでペグインターフェロン・リバビリン併用療法のことを知りました。私の場合、ウイルスの型が1bで、ウイルス量が多いタイプということでしたので、治るためには従来の治療法よりもこちらのほうがよいでしょう、という説明でした。それを聞いて、「なってしまったことを考えるよりも、今日から明日のことを考えないといけない、落ち込んでばかりいてもしょうがない」と思い、治療を受けることにしました。それに、亡くなった父が透析治療を受けていたのを見ていたので、「透析はずっとやらなくてはいけないけれど、この治療はたった1年でいいんだ。これからの人生の中のたった1年と思えば、乗り切れるかもしれない」と思いました。もし治療でウイルスが消えなかったとしても、肝硬変肝がんへの進展が抑制されるという説明を受けていましたので、どういう結果になるにしてもやるしかない、と思いました。「やってみて、それで治らなかったら、先生の指導のもとに生活すればいいんだ」と。

順調なすべり出し

 治療は、2005年11月から始め、2006年10月いっぱいで終わりました。
 治療を始める前に、主治医の先生からは夫とともに、ひととおりもふたとおりも説明を受けました。病気や治療についての冊子を数冊いただき、副作用についても説明していただきましたが、知識として頭に入っただけで、あまり実感はなかったように思います。
 最初に2週間の入院が必要ということでした。注射をする前日に入院し、翌日いろいろな検査をして、夕方から注射と薬の治療が始まりました。最初の注射のあとは、38.5℃くらいの熱が3〜4日続いたので、1週間ほどはきつかったのですが、食欲は普通にあり、1週間が過ぎると熱も下がり、普通の状態になりました。店の休みの都合で、18日間入院しましたので、注射は入院中に3回打ち、退院しました。日常生活も普通にできると言われていたので、退院して1週間ぐらいで仕事に復帰しました。
 退院後は週一回、通院で注射を打ちました。最初の頃は、夕方注射をして帰ってから仕事をしても、ちょっときついかなと思う程度で普通に生活できていました。毎月検査があるのですが、11月から治療を始めて、1月にはもう、ウイルスが全て消えていました。とても順調だと思っていたのですが…。

闘い、始まる。

 治療を始めて3か月経ったくらいから、お風呂に入ると、髪の毛が今までよりかなり多く抜けるようになりました。シャンプーを変えてみたり、美容院でスカルプトリートメントをやってもらったり…といろいろやってみましたが、抜け毛の状態は変わりませんでした。
 また、身体が乾燥して、全身がかゆくなりました。夜中にかゆみで目が覚め、夜も眠れなくなりました。さらに、寒い時期だったこともあって、何もしたくない、誰とも会いたくない、話したくないという状態になりました。あとで知ったことですが、それが抑うつ状態だったようです。仕事は続けていましたが、休みの日はパジャマのまま、1日中ぼーっとテレビを見ていることもありました。食欲はあるにはあったのですが、食べても何か美味しくないという感じで…体重も減って、一番痩せたときは6kgくらい体重が減っていました。「痩せたね、どうしたの」と言われるのもいやでしたねえ。
 1月にウイルスが消えていたので、半年くらい経つと、「もう治療をやめてもいいんじゃないか」と思い始めました。治療費用もかかるし、時間もかかるし、血液検査をされるたびに血管が痛いし、かゆいし…。それで、先生に「もうここに来るのは嫌です」と言ったんです。すると、先生に怒られて、ついほろほろっとなってしまいました。「そこでほろほろっときたり、他人と話したくない、会いたくないというのは軽い抑うつ状態だと思われます。だから、少しゆっくりしましょう」と先生に言われて、お薬をいただきました。薬は、結局飲みませんでしたけれども、「何かあったら飲もう」というお守りのような感じで、今も持っています。
 女性ということもありましたが、先生は常に話がしやすいような雰囲気で接してくださっていましたので、何でも話すことができました。また、看護師さんもいろいろ話を聞いてくださったり、電話をくださったり、外来にいるとわざわざ病棟から降りて来てくださったりして、精神面でのフォローをしてくださいました。お店に来てくださったこともあります。

副作用を乗り切れたのは…

 治療中は、家族にも負担をかけたと思います。あとになって、主人が「人が変わったんじゃないかと思った」と言っていました(笑)。最初に、主人も一緒に先生から説明を受けていましたから、よく理解はしてもらっていたのだと思います。息子たちにも「お母さんは普通の状態じゃないんだから」と理解してくれていたようです。おかげで、治療の間は、自分のことを優先的に考えさせてもらっていました。この際だ、と思って、ちょっと我儘を言ってみたり(笑)。主人はよく耐えてくれていました。一番迷惑かけましたね。
 いただいていた説明用の冊子は、治療途中にもよく読みました。髪があまりに抜けるので「抗がん剤でも打たれてるんじゃないか」と疑ったりしたのですが、冊子を読むとそういう副作用が出ることが書いてあるので、ああ、そうなのかと納得したり。治療の前に読んだ時はただ理解していただけでしたが、治療の中でいろんなことが出てくるたびに開いてみると、「ああ、こういうことか」と実感としてわかって、安心できましたね。

卒業証書

 注射は約1年間打ったのですが、25本を過ぎたあたりで「あとは終わりに向かってがんばるだけ」という気持ちになり、残りの治療回数が減っていくのが励みになってきました。このあたりから、抑うつ気分は治ってきました。ウイルスは最後まで消えたままでしたので、それが励みになったことも確かです。それから、仕事が支えになっていたということもあります。仕事をするのがつらい時もありましたが、今思えば、仕事を続けたからこそ、抑うつも軽くて済んだのではないかと思います。仕事中だけは治療を受けているということと関係なく、普通に扱ってもらえますから、私も普通に過ごすことができたのではないでしょうか。
 かゆみと脱毛は、治療が終わってもしばらくは続きましたが、だんだんと少なくなっていって、今はもう治りました。
 最後の1本(の注射)の時はもう本当に「お疲れさまでした〜〜〜!」という感じでした。治療終了半年後の血液検査で「ウイルスなし」と結果が出た時は、卒業証書をもらったような気持ちでした(笑)。ほんとに、嬉しかったですよ。
 治療は、私なりにつらかったですけれども、以前の治療法に比べたら楽なほうだと思うし…いろいろなことが、今は笑い話として話すことができます。この治療を受けて本当によかったなと思います。先生には、感謝しかありません。本当に「ありがとうございます」のひと言ですね。

治療が終わって

 治療後の生活は、治療前とは全てが違いますね。開放感があるし、お酒も飲まなくなりました。治療中は、「治ったら浴びるほど飲もう」と思ってお酒をたくさん買い込んでいたんですよ(笑)。でも、この前、友達と集まった時にビールを飲んだら、ふた口ほどで「美味しくない」と思ったんです。だから、無理して飲まないでおこうと。自然に断酒できました。もしC型肝炎であることに気づかないで、以前の調子のまま飲んでいたら、きっと先では肝硬変や肝がんになっていたでしょうね。健診を受けていて本当によかったと思います。
 お酒を飲まなくなって、時間の使い方がずいぶん変わりました。今は本を読むなど自分の好きなことに充てています。夕食のおかずも、一品多くなったり、時間をかけて工夫をこらしたりしてね(笑)。私が飲まなくなって、主人のお酒の量も減りました。
 病気になる前は、健康のことなど特別考えることがなかったのですが、自分の身体のこと、主人の身体のことなど、考えるようになりました。これからもやりたいことはいろいろありますから、自分の時間を大切に使っていきたいな、と思っています。

主治医のコメント

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