武蔵野赤十字病院消化器科部長
泉 並木 先生
日本は先進国では珍しく、肝がんは男性の死因の第3位、女性でも4位と上位にあります。毎年約3万人が亡くなっており、その原因の約70%がC型肝炎ウイルスの感染によるものです。
C型肝炎ウイルスの感染者の7割は慢性肝炎となります。この段階では肝機能は正常な人も多いのですが、徐々に進行し、そのうち4割が肝硬変に、さらにその8割は肝がんになります。ただ、進行には個人差があります。進行の早い人の原因の一つはアルコール。次に、肝臓に蓄積した鉄分の影響。肥満も疑いが強く、高齢になってからの感染も進行が早いと考えられています。
肝機能の指標であるALT(GPT)値が高くなくても、注意が必要です。慢性肝炎の人の9割が43IU/L以上の数値なのですが、実は30〜43IU/L未満でも42.9%、30IU/L未満でも16.7%が肝炎というデータがあります。また、血小板数は15万/mm3以下で慢性肝炎、10万/mm3を切ると肝硬変の可能性があります。
肝がんの大きな特徴はウイルス性であること。がんの切除に成功しても、残った肝臓にウイルスや肝硬変も残っている可能性があるためか、術後1年の再発率は20%と高率で、同じ臓器に再発を繰り返してしまうことがあります。これをいかに抑えるかが大きな課題です。
最近は高齢者でもインターフェロン治療を受ける人が多くなりました。肝がんのピークは男性で65〜70歳で、80歳以上も多い。最近は女性、特に70〜75歳が増えているのも特徴です。70歳以上だと、男女比はほぼ1対1です。今後は高齢化と女性患者の増加も問題となってくるでしょう。
いずみ・なみき
78年東京医科歯科大学医学部卒。現在、同学医学部臨床教授、近畿大学医学部客員教授。97年から武蔵野赤十字病院消化器科部長。99年にはアメリカ初の肝がんマイクロ波治療を行った。第48回日本消化器内視鏡学会会長賞など受賞
金沢大学大学院医学系研究科消化器内科教授
金子 周一 先生
肝硬変、肝がんなど肝臓病で亡くなる日本人は1年間で約5万人、そのうちの8〜9割がB型、C型肝炎ウイルス感染者です。肝臓は、症状が現れにくい“沈黙の臓器”です。特にB型、C型肝炎は慢性化しやすく、何十年にもわたって徐々に進行します。肝硬変や肝がんになってからでは、十分な治療効果を得られないかもしれません。ですから、ぜひ一生に一度のつもりで、肝炎ウイルスをチェックしてください。簡単な血液検査だけでわかります。
石川県の調査によると、肝炎ウイルス検診の陽性者のうち精密検診を受けない人が3割もいました。C型肝炎患者は3年後、半分弱の人が病院に来なくなるというデータもあります。せっかくウイルスを見つけたのに、治療をしない人がいるのは残念でなりません。
血液検査の数値が正常だから大丈夫、と思い込むのも危険です。C型肝炎患者のAST(GOT)、ALT(GPT)や血小板数は、慢性肝炎でも正常値である場合があり、測るタイミングによって変動するため、血液検査だけでは病状を判断できません。必ず、エコーやCTなどを組み合わせた定期的な検査を受けて、いまの肝臓の状態はどの段階か“いま何処(どこ)チェック”をしてください。C型肝炎で肝硬変の人は、7年で2人に1人が肝がんになるというデータがあり、肝硬変、肝がんの早期発見は特に重要です。金沢大学では、肝硬変の場合、エコーと腫瘍(しゅよう)マーカーは3ヵ月、CTは6ヵ月に1回の検査が基準です。主治医と相談のうえ、進行している人ほど期間を空けずに検査することをおすすめします。
かねこ・しゅういち
82年金沢大学医学部卒。米国南カリフォルニア大学客員教授などを経て、04年から金沢大学大学院医学系研究科がん制御学教授、同大附属病院消化器内科教授、肝臓センター・炎症性腸疾患センター長。今年から医学部長も併任。

