DDW-Japan 2004 Fukuoka サテライトシンポジウム
《講演1》
How to Maximize HCV Treatment Efficacy
Practical Applications of Results from Landmark Trials

結果待たれる
大規模臨床試験IDEALの成績
Palermo大学(イタリア)教授のA. Craxi氏は、欧米で実施されたペグインターフェロン(PEG-IFN)製剤を用いた2件の大規模臨床試験の成績を紹介。別個に実施されたPEG-IFNα-2bとPEG-IFNα-2aを被検薬とした臨床試験において、両薬ともC型慢性肝炎に対する優れた治療効果が示されていると報告。また、現在米国では両薬の直接比較を可能とする大規模臨床試験IDEALが進行中であり、その概要についても紹介した。
Craxi氏が今回取り上げた試験は、PEG-IFNα-2bを被検薬としたMannsらの試験(発表論文 Lancet 2001)とPEG-IFNα-2aを被検薬としたFriedらの試験(発表論文 NEJM 2002)である。いずれもリバビリンとPEG-IFN製剤の併用効果を検討しており、治療期間は48週間で、治療終了24週後のHCV RNA陰性化(すなわちウイルス学的著効:SVR)を1次エンドポイントとして有効性を評価している。
Mannsらは、PEG-IFNα-2b、リバビリンそれぞれ用量設定が異なる2種類の投与方法で検討を行っている。投与方法の内容は、(1)PEG-IFNα-2bを1.5μg/kgで週1回×4週間投与後、0.5μg/kgに減量して44週間投与を継続、リバビリンは患者の体重に応じて1,000〜1,200mg/日(体重1kg当たり>10.6mg)を48週間投与するもの、(2)PEG-IFNα-2bを1.5μg/kgで週1回、リバビリンを800mg/日、いずれも48週間投与するもの、の2通りであった。米国食品医薬品局(FDA)がC型慢性肝炎に対する標準治療と認めているIFNα-2b(300万国際単位×週3回)+リバビリン(1,000〜1,200mg/日)併用療法を実薬対照としている。
対象全体のSVR率は、成績が良かった順に、(1)の投与法が61%、(2)が54%、IFNα-2b+リバビリン併用療法が47%であった。ジェノタイプ1症例に限ったSVR率は、同じ順にそれぞれ48%、42%、33%であった。また、架橋線維化/肝硬変症例におけるSVR率は55%、44%、41%となっていた。
SVR率に影響を及ぼす因子を調べたところ、Mannsらの検討では、(1)ジェノタイプ 1であるか否か、(2)年齢が40歳以上であるか否か、(3)治療前のウイルス量の多少、(4)架橋線維化/肝硬変の有無、などがSVR率に有意差をもたらす独立した因子であった。一方、Friedらの検討では、(1)と(2)がSVR率に有意差をもたらす因子である点は共通していたが、(3)と(4)に関しては記載がなく、また、これら以外に、「体重が75kg以上か75kg未満か」がSVR率に有意差をもたらす独立した因子となっていた。
体重による効果の差がPEG-IFNα-2bでは認められず、PEG-IFNα-2aでのみ認められた理由について、Craxi氏は、PEG-IFNα-2bは体重に応じた用量設定であるため、体重増による効果の減弱はないが、PEG-IFNα-2aは用量が固定されているため、体重の重い症例は軽い症例に比べて効果が減弱する傾向があると指摘した。また、ペグ化されていないIFNを使った検討でも体重増による効果の減弱が報告されている。
現在、米国では体重に応じた投与方法のPEG-IFNα-2bと、固定用量を投与するPEG-IFNα-2aの直接比較を可能とする大規模臨床試験IDEALが進行中である。対象はジェノタイプ1症例であり、リバビリンとの併用でPEG-IFNα-2bとPEG-IFNα-2aの効果を直接比較するほか、PEG-IFNα-2bの用量設定の違いが効果や安全性に及ぼす影響も検討されることになっている(図1)。
図1:IDEAL (Individualized Dosing Efficacy vs.flat dosing to Assess optimaL pegylated interferon therapy) の試験デザイン

PEG-IFNα-2bとPEG-IFNα-2aの大きな違いはその分子量にあり、分子量の小さいPEG-IFNα-2bは抗ウイルス活性が高いが、血中半減期が短く、分子量の大きいPEG-IFNα-2aは抗ウイルス活性が低いが、血中半減期が長いという特徴がある(図2)。こうした相違はin vitroで容易に検証できるが、重要なのは生体内における薬物動態と抗ウイルス活性である。Craxi氏は、実際にジェノタイプ1のC型慢性肝炎症例にPEG-IFNα-2b(1.5μg/kg/回)またはPEG-IFNα-2a(180μg/回)を4週間単独投与し、両薬の薬効動態と抗ウイルス活性を調べた。
まず、血中濃度area under curve(AUC)を体重別に調べたところ、体重に応じた用量設定であるPEG-IFNα-2bはAUCが体重の影響を受けず、一定の値を示したのに対し、固定用量のPEG-IFNα-2aのAUCは体重が軽い症例ほど大きく、重い症例との間に大きな差が生じていることが判明した。
次に、IFN誘導遺伝子として知られ、その発現増加がHCV RNAの複製抑制をもたらす2'5 OASおよびIP-10の発現に及ぼす影響を調べたところ、2'5 OASおよびIP-10をアップレギュレートさせる効果は、PEG-IFNα-2aに比べてPEG-IFNα-2bで有意に高いことがわかった。当然の帰結として血中HCV RNA量の減少もPEG-IFNα-2bのほうが速やかであった。また、血中HCV RNA量の減少幅が大きい症例の割合もPEG-IFNα-2b投与群で高かった。
こうした結果からも、両薬の有効性を直接比較しているIDEALの結果が待たれると、Craxi氏は締めくくった。
図2:ペグ化による半減期と抗ウイルス活性の効果



