C型肝炎学術講演会

《特別講演》
ここまで進んだインターフェロン治療
―ペグイントロン+レベトール併用療法の挑戦―
演者:熊田 博光 氏
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 副院長
「C型肝炎学術講演会」の最後に虎の門病院 副院長の熊田博光氏による特別講演が行われた。そこで、主にPEG-IFN α-2bとリバビリン併用投与試験の成績を中心に、その要旨をレポートする。
まず、ジェノタイプ1、高ウイルス量のC型慢性肝炎患者を対象としたPEG-IFNα-2bとリバビリン併用投与試験(PhaseV 国内臨床開発試験)の成績について紹介する。この試験は、PEG-IFN α-2b+リバビリン併用(PEG/R群)の有効性がインターフェロンα-2b(イントロンA®)+リバビリン併用(IFN/R群)と同等であることを検証するもので、治験薬投与開始後の中止例はPEG/R群52例、IFN/R群55例とほぼ同数で、48週まで投与できた症例は前者が205例、後者が199例という我が国の治験データとしては最大の症例数を誇るものとなっている。
成績をみると、PEG/R群におけるウイルスの陰性化率は、投与終了時に71.7%、投与終了後24週時では47.6%であり、従来の治療と比較して非常に優れた治療効果が認められた。さらにこの成績を分析すると、IFN治療歴別のSVR率は未治療例43.1%、前回治療の再燃例62.6%、無効例19.2%であった(図1)。
図1 IFN治療歴別ウイルス陰性化率(SVR率)

ALT正常例に対して高い効果が得られる可能性
肝線維化の進展度(Staging)別にSVR率をみると、従来の成績と同じように線維化が進行するにつれてSVR率は低下していた。一方、肝組織の炎症程度(Grading)別にSVR率をみると、Mildで最もSVR率が高く、Severeで低いという結果であった(図2)。通常、炎症の程度がMildの場合はALTが低くSevereでは高いため、この結果はALTが低値でもSVR率が高いことを示しているが、我が国ではALT正常例に対しては、ほとんどIFN治療は行われていない。しかし昨今、ALT正常例に対するIFN治療の成績は異常例とほぼ同等であるというデータが欧米で報告されており、私達もALT正常94例に対してIFN治療を行ったところ欧米のデータと同じ結果を得ている。従って、ALT正常例に対して治療効果の高いPEG-IFNα-2b+リバビリン併用療法を行うべきか否かを今後前向きに検討する必要があると思われる。
服薬状況の影響
次にPEG/R群における服薬状況とSVR率の関係を検討すると、用量を変更しないと62.5%のSVR率が得られたが、PEG-IFNα-2bあるいはリバビリンを少々減量してもそれぞれ52.0%、53.3%のSVR率が得られており、中止しなければ半数以上の症例がSVRになることが明らかである(図3)。また、減量時期とSVR率の関係をみると、投与12週以降に減量した群のSVR率(57.9%)は減量しなかった群(59.0%)とほぼ同じであった。さらに、この試験成績で最も注目すべき点は、減量せずに治療を完遂できると、再燃例で84.6%、初回治療例でも52.4%のSVR率が認められたことである(図1)。従って、実際の臨床においてはきめ細かなさじ加減によって中止例をより少なくすることが極めて重要と思われる。
図2 Grading別SVR率

図3 減量及び中止とSVR率(PEG/R群)

図4 SVRとALT反応性*との関係

ウイルス消失時期とSVR率の関係
今回の成績をみると、投与初期の4週・12週でウイルスが消失した症例におけるSVR率は、それぞれ100%・71%と極めて高いSVR率が得られている。また、投与開始24週時点でウイルスが消えた症例のSVR率はPEG/R群36.4%であった。従って、我が国におけるPEG-IFNα-2b+リバビリン併用48週療法の中止基準は「治療開始後24週目のHCV RNAが陽性でなおかつALTが異常値を継続する症例」と、すべきだと考えている。
肝機能の改善効果
肝機能の改善効果は両群に全く差がなく、治療終了時にウイルスが陰性化している症例はALTがほぼ正常化しており、その後再燃した症例においても正常上限2倍以内の値を維持している割合がかなり高い(図4)。従って、先ほど指摘したように、投与24週目にHCV RNAが陽性であってもALTが正常な場合は48週間治療を続けることで、肝機能を持続的に正常に維持する効果に優れると思われる。
ジェノタイプ2a(2b)に対する治療
ジェノタイプ2a(2b)、高ウイルス(100kIU/mL以上)症例に対する当院の治療成績をみると、IFN単独24週療法のSVR率は42.1%であるが、IFNα-2b+リバビリンの24週併用療法では90.9%であり、国内臨床開発試験の成績はPEG-IFNα-2b+リバビリン併用24週療法で87.3%であった。この結果からジェノタイプ2a(2b)、高ウイルス症例に対する初回治療は、リバビリン併用24週療法を選択すべきと思われる。
今回の国内臨床開発試験で治療中の血小板数の推移を観察しているが、PEG/R群においてGrade4は1例もみられず、Grade3が1例認められているが、この症例においても血小板数は徐々に低下しており、一般にPEG-IFNで問題となっている、いわゆる急激な血小板数の減少はみられていない。このことからも、これまでのPEG-IFN治療では必須とされていた直前の血液検査は必要なく、その検査頻度においても大きく異なっている。また、IFN投与後によくみられる発熱については、PEG/R群のほうがIFN/R群よりも軽い傾向がみられた(図5)。また、65歳以上の高齢者における重篤な有害事象の発現および中止例の頻度は従来のIFNとの併用群とで差があり、中止率はIFN/R群に比較して低率であった(図6)。
つまり、65歳以上の1型高ウイルス量症例に対しては、IFNα-2bよりPEG-IFNα-2bを使うべきと思われる。従来、IFNα-2b+リバビリンの併用療法は高齢者への投与は十分な注意が必要であったが、今回のデータをみると、PEG-IFNα-2bに変えることで70歳くらいまで対象患者の年齢を引き上げることができる可能性があると思われる。
このように、C型慢性肝炎に対しては、効果と安全性を考慮して、まず第一にウイルス排除を目的とする治療を検討し、適応でなければ発癌予防の長期療法を選択すべきだと思われる。
図5 最高体温38度以上を示した症例の割合

図6 リバビリン併用療法 重篤な有害事象及び減量/中止の頻度
-65歳以上の高齢者における比較-(全国治験)

Closing Remarks
飯野四郎氏 医療法人静山会 清川病院病院長
講演の最後に挨拶した飯野氏は「PEG-IFNα-2bとリバビリンの併用療法によって60%を超える患者さんでウイルス学的著効が期待できる。PEG-IFNα-2bの特徴は体重を考慮して投与量を調整できる点で、安全性の面で優れたPEG-IFNであると思われる。従って、今まであきらめていたジェノタイプ1、高ウイルス量症例に対しても、禁忌の患者さんを除いて、積極的に治療を行うべきであると思われる。この治療で最大限の有効性を得るには、PEG-IFNα-2bは副作用を考慮しながら十分量を投与し、減量後に検査値が改善すれば増量すること。リバビリンも添付文書に基づく投与が基本だが、全身クリアランス(CL/F)に配慮し、投与初期はヘモグロビンの変化量をみながら用量調整を行うことがポイントと思われる。使い方の工夫により日本の高齢の患者さんや高体重・低体重の患者さんにおいても治療効果の向上が期待できる」と述べて講演会を終えた。


