座談会

熊田博光氏
熊田:わが国では昨年12月、C型慢性肝炎に対してPEG-IFNα-2b/RBVの1年間の併用療法の保険適用が認可され、ようやく世界標準の治療が可能になりました。本日は、こうした状況を迎え、今後、わが国の治療コンセンサスがどう変わっていくかを主たるテーマにご討議いただきたいと思います。
はじめに、わが国におけるC型慢性肝炎治療のこれまでの経緯を振り返っておきたいと思います。わが国では1992年に世界でも早期に6ヵ月間のIFN単独療法が認められました。しかしながら、その有効率は全体として約30%と決して満足できるものではなく、以後、どのような人が治り、どのような人が治らなかったかが検証され、C型肝炎ウイルス(HCV)のジェノタイプとウイルス量、肝線維化の進行度によって治療効果が著しく変わるという認識が定着してきました。
最初の10年はIFN単独6ヵ月投与という判で押したような治療を続けていたわけですが、2001年12月にIFNα-2bとRBVの併用による6ヵ月間の治療が承認されたことで、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例の治療効果が、従来の2〜5%から20〜30%まで向上しました。また、02年2月にはIFN単独療法に限り、再投与ならびに投与期間の制限が撤廃されました。さらに、03年12月には週1回投与を可能にしたPEG製剤であるPEG-IFNα-2aの1年間単独療法が認められ、04年12月、PEG-IFNα-2b/RBVの1年間の併用療法が認可され、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対して、50〜60%のSVR率が期待できるようになりました。
熊田:こうしたIFN療法の経緯を踏まえてご討議いただきますが、その前にPEG製剤が従来のIFNに比べ、どのような特徴とメリットを有しているかについてご説明いただければと思います。
泉 :従来のIFNの最も大きな問題点は、半減期が5〜8時間と非常に短く、患者さんが外来に週3回通われて注射をしなければならないことでした。PEG製剤とは、従来型のIFNαに高分子のポリエチレングリコール(PEG)を結合させ、半減期を延ばすことによって投与回数を減らすことを可能にしたものです。このため、患者さんは週1回の通院ですみ、大幅なQOLの改善が期待されます。
現在、日本を含む世界各国で、40KDのPEGが結合したPEG-IFNα-2aと12KDのPEGが結合したPEG-IFNα-2bの2種類が使われています。先頃、日本でRBVとの併用が可能になったのは、PEG-IFNα-2bです。
熊田:PEG-IFNα-2aとPEG-IFNα-2bの違いはどのようなところでしょうか。
泉 :結合するPEGの分子量の違いにより、PEG-IFNα-2bのほうがPEG-IFNα-2aに比べやや半減期が短くなっています。そのため、国内における薬物動態試験の結果、PEG-IFNα-2bは過度に蓄積しないことが明らかになっていますし(図1)、私自身の検討でも同様の結果が得られています。
一方、PEG-IFNα-2bの48週投与例においてIFN血中濃度と治療効果の関係をみますと、両者に相関は認められませんでした。つまり、血中濃度が高いから治療効果が高いというわけではなさそうですので、PEG-IFNα-2bは、過度の蓄積性がなく安定した血中濃度により、治療効果が期待できるメリットを有していると考えられます。分子量を大きくすれば、半減期は延長されますが、PEG-IFNα-2bは週1回投与を実現しながら、高い抗ウイルス活性を維持するようにデザインされたPEG-IFN製剤です(図2)。
図1 PEG-IFNα-2b薬物動態試験成績
-反復皮下投与時における血清中PEG-IFNα-2b濃度(トラフ値:Cmin)の推移-

シェリング・プラウ社内資料
図2 ペグの分子量と活性の関係

Caliceti P. :Digestive and Liver Disease.2004;36(Suppl.3):S333-S338.
熊田:PEG-IFNα-2bは、もともと抗ウイルス活性の高いIFNαをPEG化したものですので、PEG-IFNα-2bの抗ウイルス活性そのものにIFNαとの差があるわけではなく、比較試験の結果をみましてもPEG化によって治療効果には差が認められていません。その意味では、患者さんのQOLが改善されたことが大きなメリットなのだろうと思います。
ただし、従来型のIFN製剤は天然型にせよ遺伝子組換え型にせよ、用量が固定されていたわけですが、PEG-IFNα-2bは患者さんの体重により用量の調節が可能になっています。豊田先生、このあたりのことについてご解説いただけますか。
豊田:熊田先生のご指摘のように、従来型のIFN製剤は用量が固定されていたため、低体重の方は副作用が生じやすく、高体重の方は効果が減弱しやすくなるわけです。特にPEG-IFNの場合、薬剤が体内に長く留まりますので用量設定には十分注意を払う必要があると思われます。また、さらに日本人の場合、体重60kg未満の症例が全体の49%と、欧米人に比べ低体重の方が多いことから副作用が生じやすくなっていました。
PEG-IFNα-2bの場合、患者さんの体重により用量を調節できるようになったことで、こうした問題点がかなり改善されると期待されています。実際、国内の臨床試験(CHC500 study)のデータでもこの期待を裏付ける結果が示されており、体重70kg未満と70kg以上で分けますと、SVR率はPEG-IFNα-2bでは差が出ませんが、従来型IFNα製剤では高体重の群で低くなる傾向が示されています(図3)。
一方、当施設で体重60kg未満と60kg以上に分けて検討しますと、体重だけではなく、さまざまな背景因子の差から副作用の出現率が大きく変わってくることが明らかになっています。したがって、今後はこの点についてさらに検討する必要があると思っています。
図3 国内臨床試験における用量調節の有効性と安全性
-用量変更なし症例における体重別の効果-

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熊田:CHC500 studyは国内における最大のコントロールスタディだったわけですが、それでも対象は約500例ですので、今後PEG-IFNα-2bがより多くの患者さんに使われていくに当たって、やはり体重以外の指標が必要になると思います。体重以外の指標について、何かご提案はございますか。
豊田:最も重視すべき指標は年齢だと思います。もう1つは、RBVとの併用療法になりますので、貧血が問題になります。貧血の関連因子としては、腎機能、年齢、体重、性別、投与前ヘモグロビン(Hb)値といったものが考えられます。ただ、今回のCHC500 studyの脱落例には、高齢者も含まれていました。その高齢者にとっては貧血より食欲不振や発熱などの自覚的な副作用のほうが問題になると思います。
したがって、今後はこうした1つひとつの因子ではなく、これらを複合したパラメータをつくっていく必要があると考えています。
熊田:泉先生は、体重以外にどのような指標を重視されていますか。
泉 :やはり、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の開始後はHb値の低下に注意します。添付文書では10g/dLを減量の基準としていますが、高齢者の場合、そこまで待つことなく早めに減量するよう心がけています。
熊田:当施設では、高齢者ならびに投与前Hb値が13g/dL未満の症例の場合、2つの方法をとっています。1つはHb値が10g/dLになるのを待たずに11g/dLくらいから減量を開始すること、もう1つは白血球数、好中球数が減量基準に達する以前に減量することです。このような早期減量法を行えば、治験でみられたような中止例は出ないのではないかと思います。
また、高齢者の場合は少量から開始することも大切です。PEG-IFNα-2bは投与開始後の8週間、毎週血液検査を行いますので、当施設では、その間、検査値を確認しながら徐々に増量し、個々の患者さんにベストな用量を探っていくよう努めています。


