C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

座談会

変わるC型肝炎治療―難治性C型慢性肝炎に対する新しい治療コンセンサス―

ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例でも50%以上のSVR率

熊田:従来、IFN療法の選択についてはウイルス量が重視され、100KIU/mLあるいは1Meq./mLを基準に高ウイルス量と低ウイルス量に分けられていました。高ウイルス量症例については、どのような治療成績になっているでしょうか。

(写真)泉 並木氏

泉 並木氏

泉  :従来のIFNα-2b/RBV併用療法でも48週間の治療で、850KIU/mL以上の症例に対し50%を超えるSVR率を示しており、治療前のウイルス量はSVR率に影響しないことが明らかになっています。PEG-IFNα-2b/RBV併用療法についても同様の治療成績が得られており、実際、HCV RNA定量(ハイレンジ法)で検討した結果、1,000〜2,000KIU/mLでは64%、2,000〜3,000KIU/mLでは71%、3,000〜4,000KIU/mLでは75%ものSVR率が得られています(図4)。高ウイルス量症例でも、治癒する可能性が50%を超えることがこの治療法の特徴ではないかと思います。

熊田:豊田先生はいかがですか。

豊田:当施設ではCHC500 studyに30例エントリーしていますが、ハイレンジ法で3,000KIU/mL以下の症例のSVR率は約50%です。3,000KIU/mL以上の症例は7例で、うち2例が著効になっていますのでSVR率は30%弱というところです。ただ、症例数が少ないので、この30%弱のSVR率がウイルス量に起因するのかどうかは不明です。現状では、ハイレンジ法で高ウイルス量であっても十分に治癒の可能性はあるとみています。

熊田:当施設のデータでも、5,000KIU/mLまではSVR率が変わらないという結果です。現状ではウイルス量にはかかわりなくPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を施行し、将来的にはウイルス量による治療効果を検討していくということだろうと思います。

図4 高ウイルス量症例に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用治療(48週)のSVR率

(図4)高ウイルス量症例に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用治療(48週)のSVR率

提供:武蔵野赤十字病院

高齢患者には特に安全性を重視

熊田:今回、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対してPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が使えるようになったわけですが、急速に高齢社会が進展するわが国においては、高齢の患者さんに対する治療が問題になると思います。実際、臨床の現場としては、この併用療法がどのように行われているでしょうか。

豊田:わが国のC型慢性肝炎症例は高齢化が著しく、加齢に伴い肝発癌率が高まるのも事実ですので、最も治療の必要性が高いのは高齢者だろうと思います。そこで問題になるのは、安全に治療を完遂できるかどうかですので、今後この点を検証することが重要になるだろうと思います。

熊田:厚生労働省のガイドラインというのは、広く国民のために策定される性質上、年齢という要素を盛り込むのが難しいのですが、現実的にはどのようにお考えですか。

泉  :最も安全に治療するには、やはり65歳以下が対象になると思います。しかし、65歳を超えても心疾患や脳血管障害がまったくなくお元気で、肝線維化がF3と進展している方がいらっしゃいます。過去、何度かIFN単独療法を受けているにもかかわらず、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量であるために治癒されてないという場合、安全性を重視したうえで再治療する必要があると思います。

熊田:具体的には、何歳くらいまでPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を施行しうるとお考えですか。

泉  :現状では、70歳くらいまでの患者さんで他臓器の合併症がなく、ご本人が希望されれば試みるということです。

豊田:基本的には泉先生に同感です。高齢者の場合、先述のように発熱や食欲不振などの自覚的な副作用が問題になりますが、PEG-IFNα-2bでは従来のIFNα製剤に比べ自覚的な副作用が軽いと考えられますので、もう少し高齢の患者さんに対しても治療が可能ではないかと思っています(図5)。

熊田:いずれにしましても、高齢者の場合、十分に安全性を考慮して施行すべきということですね。

豊田:そう思います。

図5 PEG-IFNα-2b/RBV併用療法における高齢者の有害事象および減量/中止の頻度
-65歳以上の高齢者における比較:国内臨床試験-

(図5)PEG-IFNα-2b/RBV併用療法における高齢者の有害事象および減量/中止の頻度-65歳以上の高齢者における比較:国内臨床試験-

シェリング・プラウ社内資料

ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例の発癌率が3分の2に減少の予想も

熊田:次に発癌抑制という面からお話しいただきます。PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の発癌抑制効果については、完全にSVRになった群、ウイルスが消えなくもALTの正常化が持続する群、ノンレスポンダー群において違いがあるのか、データはございますか。

泉  :PEG-IFNα-2b/RBV併用療法については認可されて間がないので、まだデータがありません。従来型のIFNα-2bとRBV併用療法を導入して以降、ジェノタイプ2a、2b症例のSVR率が飛躍的に向上し、発癌率がきわめて低くなっています。そのため、当施設ではジェノタイプ2a、2b症例の発癌率がジェノタイプ1症例のおよそ10分の1になりましたが、これはジェノタイプ1症例に対するSVR率が十分でなかったことを反映していると思います。
PEG-IFNα-2b/RBV併用療法を1年間行うことで、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例の半数がSVRとなることから、日本で最も問題であったこのタイプの発癌率が抑制されると期待しています。具体的にシミュレーションをしてみますと、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例の発癌率が3分の2に減るのではないかと予想しています。

熊田:治験の成績をみますと、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法のSVR率は、投与開始からウイルス消失までの期間が4週以内の症例では100%、4〜12週の症例では71%、12〜24週の症例は36%ということです。したがって、どこまで頑張って治療を継続するかが問題になるわけですが、そのあたりについてはどのようにお考えでしょうか。

豊田:治験では、12〜24週のどの時点で陰性化したかが不明ですが、24週までに陰性化してくれれば可能性はあるだろうと思います。ただ、24週で陰性化した症例に対し、もう24週治療を継続して48週投与でよいのか、さらに長く続けたほうがよいかについては、今後検討していかなければならないと思います。海外では24週までにウイルスが陰性化した症例で、48週以降さらに72週まで治療を継続することにより、かなりSVR率が上がるというデータが報告されています(図6)。

熊田:その結果をふまえて、今後、日本でもこうしたデータをつくっていく必要があると思います。

図6 ウイルス消失時期の遅い症例(12〜24週)における 72週併用療法の検討

(図6)ウイルス消失時期の遅い症例(12〜24週)における 72週併用療法の検討

Buti M. et al:Hepatology.2003;37:1226-1227.より一部変更

SVRが得られなくてもALT正常化(生化学的著効)を目指す

熊田:もう1つの問題として、24週目でウイルスが消えなかったものの、ALTは正常だという患者さんがおられるわけです。この場合、患者さんのほうから「ALTが正常になっているから、もう少し継続したい」と希望されることもあるかと思いますが、現場としてはどのように対応されますか。

泉  :実際のところ、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法に賭けていらっしゃる患者さんが多いので、なるべくご希望に添いたいと思います。この治療のもう1つの特徴は、治験の結果をみても、従来の半年間のIFN単独療法よりALT正常化がかなり増えていることです。およそ2割の方がウイルスは消えなくてもALT正常化を認めています。
したがって、PEG-IFNα-2b/RBV併用を1年間継続し、完全にウイルスが消えなくても、ALT正常化を狙うということも今後は視野に入ってくると思います。

熊田:IFN単独6ヵ月投与のデータではっきりしているのは、ウイルスが消えたことによって発癌が減ったという事実です。

豊田:実は、私どものデータでも発癌率は生化学的レスポンダー例が最も低く、SVR例に優っていますので、発癌抑制に対してはALT正常化が重要だと考えています。

熊田:そうしますと、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法では、IFN単独投与以上にALT正常化を重視していく必要があると考えてよろしいですか。

豊田:当施設では、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法のほうが生化学的レスポンダーになる率が高くなるという印象をもっています。したがって、泉先生ご指摘のようにRBVを併用できる人はなるべく併用して、まずはSVRを目指し、そしてたとえSVRが得られなくても生化学的レスポンダーを狙うのは1つの目標になると思います。

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