C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

座談会

変わるC型肝炎治療―難治性C型慢性肝炎に対する新しい治療コンセンサス―

ジェノタイプ2a、2bかつ高ウイルス量症例にも高い有効性

熊田:従来のIFN6ヵ月単独投与では、ジェノタイプ2a、2bの低ウイルス量症例は70%近くが治癒しましたが、高ウイルス量症例では40〜50%しか奏効しませんでした。その後、PEG-IFNα-2aの1年投与が承認され、将来的にPEG-IFNα-2b/RBVの24週間の併用療法が承認されれば、より選択肢が広がりますが、ジェノタイプ2a、2b高ウイルス量症例に対してはどのような治療が考えられるでしょうか。

(写真)豊田成司氏

豊田成司氏

豊田:当施設では、ジェノタイプ2a、2bかつ高ウイルス量症例に対してはPEG-IFNα-2b/RBVの24週間投与で70%ぐらいのSVR率を得ています。

熊田:泉先生はいかがですか。

泉  :ジェノタイプ2a、2bかつ高ウイルス量症例に対しては、従来型IFNα-2b/RBVの6ヵ月間の併用療法で84%という高いSVR率が得られています。PEG-IFNα-2aについては心不全などの合併症のある方、妊娠の可能性のある方といったRBVの使えない方を対象にしているため、SVR率は不明ですが、基本的にはPEG-IFNα-2b/RBV併用のほうが高いだろうと推定しています。

*:PEG-IFNα-2b(商品名:ペグイントロン®)製品添付文書において、効能・効果の対象は「セログループ1(ジェノタイプI(1a)またはII(1b)で血中HCV RNA量が高値の患者)」となっています。

無症候性キャリアの場合ALT正常値の定義が問題

熊田:厚生労働省が平成14年度から肝炎ウイルス検診をスタートさせ、99.9%の都道府県が協力をしてくれたことは喜ばしいことですが、発見されたHCVキャリア、HBVキャリアをみますと意外にALT正常例が少なくありません。実は平成15年度のガイドラインでも、こうしたキャリアをどうするかについては触れておらず、厚生労働省からは早急に研究班としての結論を出すよう迫られています。泉先生、豊田先生は研究班のメンバーでもありますので、ご意見をお聞かせください。

泉  :かつて、AST/ALT正常例については、IFN単独療法を行うとかえってAST/ALTの悪化が懸念されたことから「寝た子を起こすな」といわれましたが、それはやはりSVR率が低かったからだろうと思います。しかし、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の海外スタディでALT異常症例とほぼ同じ治療成績が得られたことでAASLD(米国肝臓病学会)のガイドラインでもALT値だけで治療を決めるべきでないとの勧告がされました。日本でもPEG-IFNα-2b/RBV併用療法によりALT異常症例に対して約50%を超えるSVR率が望めるようになったことで、高齢になって治すより若いうちに治したほうがよいと考えられるようになったのだろうと思います。
しかし、現段階で無症候性キャリアすべてに治療するというのは当然誤りであり、個々の症例を見極め、将来、肝炎から肝硬変を経て肝癌で亡くなる可能性がある場合、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法が選択肢になるだろうと思います。

豊田:基本的には泉先生に同感ですが、1つにはALTの正常値の定義に問題があると思います。というのは、キャリアの方々の多くはALTの正常範囲に入っているのですが、肝線維化が進んでいることが少なくありません。
確かに、ALTが正常範囲で落ちついている方は肝線維化が進展せず、発癌率が低いのは事実ですが、そういう方々のなかにじわじわと肝線維化が進行する方がおられるのです。それを前もって見分けることが可能になれば、ALT正常範囲でも積極的に治療するということになるのでしょうが、現時点では難しいと思います。

熊田:実際のところ、肝臓の専門医の先生方は、一般にALTの正常範囲とされる35〜40IU/Lなど、とても正常とは思っていません。IFN療法により治癒した方々の値を見ても、少なくともALT25 IU/L以下であることが多いわけです。したがって、将来的にはALT35IU/L程度はもう正常値ではないと考えて、積極的に治療していくという方向性もありうるということでしょうか。

豊田:そう思います。

熊田:この問題については、ここで結論を出すことはできませんし、研究班のメンバーにもさまざまなご意見がおありでしょうから、もう少しALT正常例の予後を検討したうえで、来年3月までに議論がまとまれば結論を出してみたいと考えております。

個々の症例を注意深く検討して治療を判断

熊田:最後に副作用の問題に触れておきたいと思います。PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の治療効果を最大化するためには、48週の投与期間を完遂することが重要であり、副作用出現時も早期に減量するとともに、できるだけ治療を継続することで十分な治療効果が得られるとされています。ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対するSVR率は、かつてIFN単独6ヵ月投与では2〜5%でしたが、PEG-IFNα-2b/RBVの1年間併用療法により50%という時代を迎えているだけに、なるべくドロップアウトする症例を少なくする必要があろうかと思います。添付文書には、高齢者、高血圧、糖尿病、腎機能低下、投与前Hb低値の症例などに対しては慎重投与としていますが、これに加えて新たに使用禁忌の症例を考えて入れるのか、入れないのか、こういう症例はやめたほうがよいということはございますか。

豊田:先ほども申し上げたように、PEG-IFNα-2bは自覚的な副作用については従来のIFN製剤よりかなり改善されると思います。臨床検査値上、問題になるのは血小板や白血球、RBVの併用に伴うHb低下と考えています。したがって、個々の症例がどれぐらいこうした副作用が出やすい因子を持っているかを、単独ではなく複合的なパラメータで見ていかなければならないと思っています。

熊田:当施設では、65歳以上で高血圧があって糖尿病があるというように、3つのリスクが重なれば適応としないと決めているのですが、泉先生のところではこのような歯止めの目安を考えておられますか。

泉  :絶対にやってはいけないといっているのは、糖尿病の血糖コントロールの悪い患者さんです。空腹時血糖が200mg/dLを超えている場合は非常にリスクが高いので、血糖コントロールをきちんとしたうえでなければやってはいけないといっています。
もう1つ重視するのは、豊田先生がよい指標を示しておられるクレアチニンクリアランスであり、クレアチニンそのものは正常でも、クレアチニンクリアランスが悪ければ慎重に治療するよう指導しています。

熊田:そうしますと、糖尿病のコントロールがきわめて悪い方を除いては禁忌とせず、他のリスクのある方は慎重に治療するということですか。

泉  :そうですね。

新しいC型肝炎治療ガイドライン

熊田:過去において、多くの患者さんを治療できると期待された薬剤であるにもかかわらず、有害事象の出現により日の目を見なくなった事例は枚挙にいとまがありません。
わが国は現在、PEG-IFNα-2b/RBV併用による1年間の治療が承認されたことで、ようやく世界標準の治療が可能になりました。日本でもその認可を受けて厚生労働省の治療標準化研究班でも、新しいガイドラインが発行されました。その初回治療の高ウイルス症例ではRBV併用療法が原則であり、特にジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対しては、このPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が推奨されています(図7)。また、再治療では治癒目的と発癌抑制目的ごとに治療選択が異なります(図8)。このPEG-IFNα-2b/RBV併用療法によって恩恵を受けるべき患者さんの多くは、従来の治療によっては救い難かったジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例であり、なおかつ患者さんの高齢化は著しく進んでいます。このようなことを考えますと、1例1例について安全性と効果を見極め、個々の患者さんに対しては十分に適切な説明をしたうえで、注意深く治療していくことが切に求められると思います。その意味では、特にジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例については、経験豊富な専門医の先生方がおられる施設に一度患者さんに足を運んでいただき、専門医の微妙なさじ加減を生かして治療していく必要があろうと思います。全国で行われている肝炎ウイルス検診につきましても、発見されたキャリアを各地域における病診連携により専門医の先生方のところに集中させ、合理的な治療が行われることが主たる目的とうかがっています。PEG-IFNα-2b/RBV併用療法は、今後このように専門医の先生方が1例1例を大切に治療しながら、症例を蓄積することによって、新しいメッセージを発信していかなくてはなるまいと考えています。
本日ご出席の先生方には、長時間にわたる貴重なご討議をたまわり、厚くお礼を申し上げます。

図7 平成16年度C型肝炎治療ガイドライン(初回治療)

(図7)平成16年度C型肝炎治療ガイドライン(初回治療)

厚生労働省:C型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究より

図8 平成16年度C型肝炎治療ガイドライン(再治療:治療目的)

(図8)平成16年度C型肝炎治療ガイドライン(再治療:治療目的)

厚生労働省:C型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究より

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