C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

座談会

C型肝炎治療へのPEG-IFNα-2b+リバビリン併用療法の挑戦

早めに投与量を調整して副作用に対処することが治療の完遂にとって非常に大切である

坪内:PEG-IFNα-2b/RBV併用療法は1年間の投与を完遂することが非常に重要です。そこで、副作用に対して具体的にどのように対応していらっしゃるか、お教えください。

八橋:既に指摘したように、PEG-IFNでは自覚的な副作用が軽減した一方で、血小板や白血球の減少、RBVの併用によるヘモグロビン(Hb)値の低下が問題となりますが、事前に投与量を調整することで中止に至るような重篤な副作用は回避できます。具体的には治療開始前に患者さんの状態を十分に検査して、副作用が発現しやすいと判断したら投与量を減らしてスタートして経過観察します。また、臨床検査値が下がってきたら、早めに減量して慎重に見守ることが大切です。このように早めに手を打てば、中止に至ることはまずありません。事実、私たちの施設では今までのところ中止例は1例もありません。

佐田:私たちの施設で治療を受けている半数以上の患者さんは60歳以上の高齢者ですから、貧血については十分注意しています。特に治療前のHb値が14g/dL以下の症例では貧血の出現率が高いので、治療開始時からRBVの投与量を調整しています。

坪内:十全大補湯を併用するとHb値の低下が有意に抑制されるという報告がありますから、こうした工夫も大切ですね。

佐田:私どもはエイコサペンタエン酸(EPA)の併用で溶血性貧血を予防できることを確認しています。しかし改善効果に有意差はありますが、著明な改善とまではいえない例が多いので、さらなる工夫が必要と思われます。

坪内:注射部位の発疹出現について報告されていますが、いかがですか。

佐田:PEG化されていますので、軽い発赤がでる場合が多いですが、注射する部位を変える工夫で防ぐことができます。
一方、C型慢性肝炎の患者さんでは、皮膚や口腔内の扁平苔癬の発症頻度が高いのですが、IFNを投与すると悪化したり新たに発症する場合があり、患者さんによっては食事ができないほど悪化する場合もありますので、こうした副作用も見逃さないできちんと治療することが、結果的な治療の継続につながると思います。

坪内:先ほど佐田先生から、高齢者に対してはより注意が必要であるというご指摘がありました。そこで次に、高齢者に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用療法の留意点についてコメントしてください。

八橋:高齢者の治療において最も大切なことは安全性ですから、PEG-IFNα-2bとRBVの投与量は、60歳以下の患者さんより1ランク下げてスタートし、1年間の治療を完遂することを目標にしています。60歳以上の高齢者は発癌リスクが極めて高いので、たとえウイルスを駆除できなくても、IFNを1年間投与することは発癌抑止という面で大きな意味があると考えています。

佐田:高齢者は合併症が多いので、治療開始にあたっては全身的なチェックを行うことがまず大切です。臨床開発試験の結果から、たとえPEG-IFNα-2bとRBVの両剤を減量しても、1年間の治療を完遂できればかなり高いSVR率を得られますので、八橋先生がご指摘のように、少ない投与量からスタートして治療の完遂を目指すことも大切だと思います。

将来的には、ALT正常症例に対してもPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が選択肢となる

坪内:従来、ALT正常のHCVキャリアにIFN単独療法を行うと、ALTの悪化が懸念され「寝た子を起こすな」といわれていました。その背景には、こうした症例のSVR率が低いということも関係していました。しかし最近の海外の報告では、こうした症例に対してもPEG-IFN/RBV併用療法は有効だといわれています。また、ALT正常であっても高齢者では発癌の危険性があることもわかってきました。したがって今後、ALT正常例に対する治療の考え方が大きく変わる可能性があると思われますが、いかがでしょうか。

八橋:一般的に、ALT正常例はALT異常例と比較して、肝組織の所見が軽いことが多いのですが、調べてみると中にはF3とか肝硬変の症例もあります。また、検査時に正常であってもその前後で異常を示す症例はかなり多く、ALTが正常だからといって予後が良好とは必ずしもいえません。したがって、今後はALT正常のHCVキャリアにも積極的に治療を行うべきだと思っています。しかし治療を開始するには順番があり、例えば線維化が進んだ症例、肝癌を発症する可能性が高い症例などから治療すべきです。
一方、治療効果の面ではジェノタイプ2型にはすぐにでも治療すべきだと考えています。問題なのはジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例で肝組織の所見がF0の症例で、こうした症例に関する本邦のデータはほとんどありませんので、今後の検討が必要です。

佐田:私は、ALT値が25IU/L未満で、かつALT値がAST値より低く、その値が3か月間持続している症例以外は、治療の対象になると考えています。その理由は、IFN治療そのものに発癌を抑える効果があり、従来の治療と比べてPEG-IFNα-2b/RBV併用療法のSVR率が非常に高く、再燃も少ないからです。
患者さんの意志も重要で、すべての情報を提供したうえで患者さんが治療を受けたいと望むなら、積極的に行うべきだと思います。

坪内:一般に多くの施設のALTの正常範囲は35〜40IU/L以下で、最近、この値を見直す必要があるという意見もあります。例えばIFN治療によって治癒した症例では、ALT値は20〜25IU/L以下になることが多いので、ALTが35〜40IU/Lというのは、本当は異常値である可能性が高いですね。
また、ALT正常例に対するPEG-IFN /RBV併用療法の有効性と安全性が認められたため、米国肝臓病学会(AASLD)のガイドライン(2004)では「症例によって、肝生検および治療を検討すべき」という勧告をだしています(表2)。したがって、本邦においても前向きに検討する必要がありますね。

八橋:実は、数年前のDDWで「肝機能正常者はIFN治療対象外」と決めたのです。これが今日まで浸透しているのですが、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法が登場し、治療法、治療効果とも変わったのですから「もはや肝機能正常者は治療対象外の時代ではない」ということを強調したいですね。
HCVキャリアでは肝癌だけでなく、リンパ腫などの肝外症状も考慮しなくてはいけませんから、特に若い世代に対しては治療によってウイルスを駆除して、将来に対する不安を払拭してあげることが非常に大切だと思います。

坪内:まさに新しい治療法の出現によって、新たな局面を迎えているということですね。

表2 ALT持続正常HCVキャリアに対する Recommendation

(表2)ALT持続正常HCVキャリアに対する Recommendation

(Alberti A. et al.:Dig liver Dis, 36:646-654,2004)

C型慢性肝炎の治療には、専門医とかかりつけ医の連携が重要

坪内:慢性肝炎の治療においては、専門医と一般開業医(かかりつけ医)の連携が非常に重要だと思います。そこで最後に一般開業医(かかりつけ医)の先生方へのメッセージ(表3)をお願いします。

八橋:まず、C型慢性肝炎は治せる時代になったということを認識していただきたい。そしてPEG-IFNの登場で週1回の投与ですみ、自覚する副作用は非常に軽減され、従来よりはるかに楽な治療になったことです。しかし、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法は、さじ加減を必要とする特殊な治療ですので、C型慢性肝炎の患者さんをみつけたら、病診連携によってまず専門医に紹介していただきたいと思います。

坪内:本日は「PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の挑戦」というテーマで専門医のご意見を伺いました。
現在PEG-IFNα-2b/RBV併用療法(48週)は、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対して保険適用となっていますが、いずれはそのほかの症例に対しても第1選択になると思われます。また、この治療法のSVR率をさらに向上させるための工夫、例えば1年以上の長期投与の有用性を検討する必要があると思われます。さらに肝硬変に対してもこの治療は有効と考えられるので、今後の検討が待たれます。
本日はありがとうございました。

表3 かかりつけ医の先生方へのメッセージ

(表3)かかりつけ医の先生方へのメッセージ

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