C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

第41回日本肝臓学会総会ランチョンセミナー

最新のPEG-IFNα-2b/RBV併用療法の治療成績および今後の課題

熊田 卓氏

熊田 卓氏

《講演2》

ALT正常例に対するIFN治療
「ALT正常例」にPEG-IFNα-2b/RBV併用療法による
早期治療介入を

これまでのHCV RNAが陽性でALTが正常で持続する症例への治療は、以前のNIHコンセンサスリコメンデーションなどで示されているように治療を積極的に推奨するものではなかった。しかしながら、昨年発表された米国肝臓学会(AASLD)ガイドラインでは「血清トランスアミナーゼ値に関係なく、合併症の有無、著効が得られる可能性、重篤な副作用発現の可能性、肝生検による肝疾患進行の程度をもとに治療の決定がされるべきである」と勧告されている。そのような状況の中、ALT持続正常HCVキャリア(以下、「ALT正常例」)に対する治療の是非がわが国でも論議を呼んでいる。
大垣市民病院消化器科部長の熊田 卓氏は、自験例および文献的考察を交えながら、「ALT正常例」の特徴を明らかにし、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法による治療方針を提示した。

「ALT正常例」でも約3分の2で肝線維化が進行

臨床検査値の正常値は従来、基準値という概念で考えられてきた。しかし、欧米では最近、単純に計測値の中央値を含む95%の範囲に基準値を設定するのは疾患の性格、重要度から必ずしも妥当とは言えず、対象とする疾患ごとに測定カットオフ値(臨床判断値)が設定されるようになってきたという。例えば、6,835例の初回献血者を解析したイタリアのデータ(Pratiら,2000)では、男性30IU/L、女性19IU/Lが、ALT正常の基準上限値として妥当であると示されている。
このように、現在のALT正常上限値が、本当の意味で正常値でないことを裏付ける海外の報告として「ALT正常例」の組織像をみた場合、約3分の2に肝線維化の進行している症例がみられるという(Pierreら,2002)。熊田氏らの成績でも「ALT正常例」82例の約3分の2がF1以上を示し、グレード別ではA1が75.6%を占めていた。さらに「ALT正常例」であっても、経過観察期間が長くなった場合には肝線維化の進展が観察されることから、同氏は「ALTが基準値内でも約3分の2で肝線維化も進行する」と指摘した。

「ALT正常例」も10年で71.5%がALT異常に、発癌症例もみられる

また、「ALT正常例」の予後について、ALT値が35IU/L以下の症例においてその後のALT値の推移を検討した。対象は、大垣市民病院で10年間(1995.1〜2004.12)に経験したHCV抗体陽性患者5,300例のうち、1)観察開始時の初回ALTが35IU/L以下、2)観察期間が3年以上、3)ALTを6回以上測定、4)IFN未治療、の条件を満たした547例。「ALT正常例」において、ALTの異常出現時期を検討したところ、5年で57.5%、10年で71.5%であった。
さらに、「ALT正常例」から発癌症例が見られるかどうかを検討するために、上記HCV抗体陽性5,300例中、1)5年以上の経過観察、2)ALTの検査回数が10回以上、3)IFN未治療、4)観察開始時に肝細胞癌合併がない、5)観察開始時から3年以降に発癌、の条件を満たす症例のうち、ALT正常群(35IU/L以下)125例および異常群(36〜70IU/L)211例を比較検討した結果、発癌率では両群に有意差はなく、ALT正常群からも発癌していることが判明した(図1)。
熊田氏は、「初回ALTが基準値以内(35IU/L以下)でも10年間に約70%が異常を示し、中には発癌するケースもある」とし、「ALTの基準値は各施設で規定されているが、IFN治療適応の判断として、基準値は妥当性に欠く」と言及した。

図1 「ALT正常群」(35IU/L以下)と異常群(36〜70IU/L)の発癌率の比較

(図1)「ALT正常群」(35IU/L以下)と異常群(36〜70IU/L)の発癌率の比較

「ALT正常例」はALT異常例と同様にPEG-IFNα-2b/RBV併用療法により、早めの治療を検討

一方、「ALT正常例」84例に対してIFN治療を行ったところ、33例にSVRが得られたが、高ウイルス症例に対しては、IFN単独投与では低い効果だった。治療後の経過をみると、ウイルス陰性化かつALT正常群(CR)39.3%、陰性化せずALT正常群(IR)27.4%、陰性化せず一過性にALT上昇したが正常化した群19.0%、陰性化せずにALTも持続的上昇した群は14.3%であり(図2)、IFN単独療法では、いわゆる“寝た子を起こした”症例も存在した。
なお、RBV国内開発試験において、治療後に再燃した症例だけに絞り、ALTの推移をみると、IFNα-2b/RBV併用療法はIFNα-2b単独療法に比べて有意にALTを低下させることから(図3)、「RBVによって“寝た子を起こす”ことが抑制できる」と熊田氏は指摘。また、海外の報告(Zeuzemら,2004)より、「ALT正常例」に対するPEG-IFN/RBV併用療法48週投与において、ジェノタイプ1ではSVR率40%が、ジェノタイプ2および3ではSVR率78%が得られたことから、同氏は「ALTが基準値内でもPEG-IFN/RBV併用療法48週投与であれば、ジェノタイプ1に関してALT異常例と同様の治療効果が得られ、また、ジェノタイプ2についてはより積極的に治療対象になるのではないか」と指摘した。なお、Zeuzemらの成績から、ALT正常と定義された投与前ALT平均値が20IU/L前後の症例であっても、投与終了後にSVRが得られた例で平均10IU/L前後に低下していたことから、ウイルスを排除することによって、本当の意味のALT正常が得られるのではないかと考えられた(図4)。
最後に熊田氏は、「10歳加齢につき8%SVR率が低下するという報告(Fosterら,2003)からも、治療介入時期については早ければ早いほうがよい」と述べ、「PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の導入により、今後は治療の個別化を考えていく必要がある」とまとめた。

図2 「ALT正常例」に対するIFN治療後の経過(n=84)

(図2)「ALT正常例」に対するIFN治療後の経過(n=84)

図3 IFNα-2b/RBV併用療法24週投与終了後再燃例の平均ALT値の推移

ジェノタイプ1型症例(RBV国内開発試験)

(図3) IFNα-2b/RBV併用療法24週投与終了後再燃例の平均ALT値の推移

図4 PEG-IFN/RBV併用投与後の治療効果別血清ALT値の推移

(図4) PEG-IFN/RBV併用投与後の治療効果別血清ALT値の推移

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