ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対しては
PEG-IFNα-2b/RBV併用療法が第一選択
全身クリアランスからRBVの初回投与量を決めることで治療を完遂できる確率は高くなる
図4 輸血によるHCV感染年齢と肝癌発生時年齢

[Cancer. 2002;95(2) :331-339]
図5 高齢者(65歳以上)C型肝炎におけるIFN治療による発癌抑止効果と発癌危険因子

[Nippon Rinsyo. 2004;62(Suppl 7)]
沖田:本邦における肝細胞癌の原因の約70%をC型慢性肝炎が占めており、肝癌による死亡者数はこの30年間で約3倍に増加し、現在、年間3万5千人に達しようとしています。従来、HCVに感染してから肝癌が発生するまでは約30年間かかると言われていましたが、最近の報告を見ると、感染期間の長さより、症例の年齢が肝癌の発生リスクになることが明らかになりました。その報告によると、56歳以上の症例は56歳未満の症例と比較して、7.8倍も肝癌発生リスクが増加していました(Cancer.2002; 95(2): 331-339)。また、実際に肝癌が発生した症例の輸血時の年齢と肝癌発生時の年齢を検討したところ、肝癌発生の92%が60歳以上でした(図4)。つまり、感染期間よりも患者さんの年齢が重要であり、高齢者ほど肝癌発生の可能性が高いことがわかります。一方、65歳以上の高齢者227例を対象として、IFN治療の効果別に発癌抑制効果を検討した報告を見ると、無効例や再燃例では有意な発癌抑制効果はみられませんが、著効例では有意に発癌が抑制されています(図5)。したがって、治療の効果が期待できる高齢者には、積極的にPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を考慮すべきだと思います。しかし、高齢者ほど治療を中止するケースが多いのも事実です。そこで、高齢者に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を完遂させるポイントについてご意見を伺いたいと思います。
豊田:すでに皆さんが指摘されているように、C型慢性肝炎治療の目的はウイルスを完全に除去することであり、ウイルスを除去するためのゴールデンスタンダードはPEG-IFNα-2b/RBV併用療法となります。そこで、この治療が何歳まで安全にできるかが大きな問題となりますが、治療にあたっては、まず1人1人の患者さんの背景因子をきちんと調べることが大切です。また、特に高齢者においてはRBVの初回投与量が問題になります。なぜなら、初回投与時からRBVを減量すると治療中の減量・中止の確率は少なくなりますが、有効性も低下する可能性が高いからです。そこで私たちは、有効性を損なわずに治療を完遂できるRBVの初回投与量を個々の患者さんの全身クリアランス(CL/F)*から計算することを提唱しています。
従来の検討から、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法において、その有効性と安全性を確保するには、投与開始4週時のRBV血中濃度が2,000〜2,500ng/mL必要であると言われています。この至適RBV血中濃度からCL/Fの検討を行ったところ、CL/F8〜18がcut off値になるのですが、60歳以上の高齢者におけるCL/Fの分布はほとんどが10以下であり、現状とあいません。そこでさらに検討した結果、高齢者におけるRBVの初回投与量はCL/Fが8未満の場合は400mg、8〜12の場合は600mg、12以上の場合は800mgが適当な投与量と考えています。
一方、CL/F値は体重、年齢、性、血清クレアチニン(Scr)値の4つの因子がパラメータになっているのですが、その式が非常に煩雑であるという意見が多いので、このたび年齢と体重からCL/Fを計算する簡易的な方法を提案しました**。性と体重はきわめて相関が強く、血清クレアチニン値は年齢あるいは体重と相関が強いため、体重と年齢にて重回帰分析を行ったところ、簡易的に年齢と体重からCL/Fが検討可能になったのです。つまり、患者さんの年齢と体重から最適なRBV初回投与量を計算し、実際には投与1〜2週目のヘモグロビン変動量を見ながら微調整することで、治療を完遂できる確率が高くなると思われます。
そこで、年齢と体重から算出したCL/Fから高齢者におけるRBVの初回投与量をまとめたものが表1です。この表に基づいたRBV量を投与することで、高齢者における治療の中止率は減少し、SVR率は増加すると予測しています(表2)。事実、CL/Fに基づいてRBVの投与量を決めている当院の成績を見ると、中止率と減量率は低く、投与開始12週目のウイルス陰性化率は高くなっています(表3)。
表1には70歳以上の方の投与量も示しています。70歳以上の高齢者に対して、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行うか否かについては、さまざまな意見があると思いますが、70歳以上でも元気な方はたくさんおられます。また、高齢者では肝硬変あるいは肝癌への進展が非常に早いことも明らかになっていますので、治療できる方には積極的に治療を行うことが重要であり、その場合の安全性の指標としてこの簡易CL/Fを利用していただければと考えています。
表1 高齢者におけるリバビリン初回投与量
(簡易版)

表2 高齢者におけるPEG-IFNとリバビリン併用療法
-原稿とリバビリン投与量(簡易版)との比較-

表3 CL/Fに基づいたリバビリン投与量の実際
- 札幌厚生病院成績 -

沖田:70歳以上の高齢者に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用療法の適応については、どのようにお考えですか。
茶山:たとえF1でも、60歳代で肝臓病しかない方の死因は、肝硬変や肝癌が圧倒的に多く、また70歳くらいになると、F1あるいはF2の患者さんでも肝癌の発生が増えてきますので、やはり70歳代でも元気な方には積極的に治療すべきだと思います。
沖田:最後に、病診連携の実際についてお話ください。
豊田:私たちは、まず最初の2週間は入院していただき、その後はPEG-IFNα-2bの注射はそれぞれのかかりつけ医に任せ、1か月に1回外来で診ています。PEG-IFNα-2bの副作用である白血球や血小板の減少は約1週間の投与でその後の推移が予測できますが、RBVの副作用である貧血については治療初期の段階では判断できないためです。そこでRBVの投与量の調整は1か月に1回、外来で行っているのです。
沖田:すでに指摘したように、節目検診などで見つかったC型慢性肝炎患者さんの多くが十分な治療を受けていないのが現状であり、高齢者の肝癌予防も急務です。その意味で、患者さんの最も近くにいるかかりつけ医がPEG-IFNα-2b/RBV併用療法の必要性を深く認識することがきわめて重要と思われます。本日はありがとうございました。
*CL/F(L/hr) =32.3×体重×(1-0.0094×年齢)×(1-0.42×性)/血清クレアチニン
- ・体重:kg
- ・性:男性=0、女性=1
- ・血清クレアチニン:μmol/L
**簡易CL/F=0.244×体重-0.22×年齢+8.02


