ワークショプ 「Virus側と宿主側からみたC型慢性肝炎治療の将来像」より
C型慢性肝炎治療の世界標準とされるPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行っても、HCVを排除できない症例はジェノタイプ1かつ高ウイルス量例の約半数に及ぶ。このような難治例の成績改善を目指し、難治要因を解析する研究がウイルス、宿主の両面から盛んに進められている。本ワークショップでは、IFN/RBV併用療法における難治要因とそれに基づく効果予知に関する研究成果が明らかにされた。
IFN/RBV併用48週間投与を行っても治療中にHCV RNAが陰性化しないウイルス学的不応(NVR)例は「究極の難治例」と呼ばれる。虎の門病院肝臓センターの芥田憲夫氏らはこれまで、IFN/RBV併用療法でNVRとなる治療前の難治要因として、HCV core領域のアミノ酸変異(aa70 and/or aa91の置換、特にR70Q and/or L91M)の関与を報告してきた。今回は、治療開始早期の要因も含めて検討した。対象は、IFN/RBV併用48週間投与を行ったジェノタイプ1かつ高ウイルス量の50例(うち34例はPEG-IFNα-2b使用)。
まず、NVRに寄与する治療前の難治要因を検討したところ、HCV core領域のaa70、aa91のアミノ酸置換、特にR70QとL91Mがある群で、NVRの比率が92%と有意(p=0.003)に高かった。この成績から、上記のアミノ酸変異の存在が、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量例に対してIFN/RBV併用48週間投与を行うか否かを判断する際の重要な指標になりうることが示された。
さらに、治療開始早期のウイルス動態を検討すると、NVR例のほとんどは、治療開始48時間後のHCV RNA量が治療開始前の1log以上低下していなかった。このことは治療開始早期の難治要因と考えられた。
これら難治要因の有無別に治療成績を調べたところ、アミノ酸変異がない症例では全例ウイルス学的有効(VR)で、73%がウイルス学的著効(SVR)と判定された。アミノ酸変異はあったが、治療開始48時間後のHCV RNAが1log以上低下した症例ではVR率93%、SVR率64%と成績がやや低下した。これに対して、アミノ酸変異があり、かつ治療開始48時間後のHCV RNAが1log以上低下しなかった症例では、VR率15%、SVR率8%と、極端に悪い成績となった。
以上より、芥田氏は「ジェノタイプ1かつ高ウイルス量に対するIFN/RBV併用療法では、HCV core領域の70番目、91番目のアミノ酸置換と治療開始後48時間以内のHCV動態の検討を併用することにより、治療効果を早期に判定できる」と結論した。
一方、宿主側の治療前難治要因に関しては、まず、広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病態制御内科学の丁守哲氏らが、治療前の肝生検で得られた組織中のmRNA発現状態について検討した結果を報告した。
IFN/RBV併用48週間投与でSVRの25例、再燃(TR)の14例、NVRの7例において治療前肝生検を行い、肝組織中の774遺伝子のmRNA発現量をcDNAマイクロアレイにより測定。各群7検体で遺伝子抽出を行い、さらに3群の判別分析を実施した。その結果、3群で異なる遺伝子パターンが認められ、SVR、TR、NVRを95%の確率で判別できることがわかった。なお、TRのmRNA発現状況は、NVRよりもSVRに近い傾向が認められた。丁氏は「DNAマイクロアレイはIFN治療前の肝組織中遺伝子発現により薬剤応答性を評価し、治療効果予測においてのスクリーニング法の1つとして有用である可能性が示唆された」と述べた。
大阪大学大学院医学系研究科分子制御治療学の考藤達哉氏らは、PEG-IFN/RBV併用療法の治療効果予測において、樹状細胞(DC)機能の評価が有用であると考えられる成績を報告した。
DCは生体内で最も強力な抗原提示細胞。考藤氏らはこれまでに、その減少および機能低下が、HCVの持続感染の維持に関与する可能性を指摘してきた。今回は、早期(治療開始12週後)にウイルス学的応答が認められた症例をSVR例とTR例に分けてDC機能を比較すると、治療終了時(48週後)のDC機能がTR例で有意に低くなる成績などが得られた。さらに、DC細胞のサブセットであるPlasmacytoid DC(PDC)の治療中における比率やTh2細胞の頻度も治療効果に関連していることがわかり、これらもDC機能とともにPEG-IFN/RBV併用療法の効果予測における免疫学的マーカーになり得るとした。


