ワークショプ 「生活習慣病(糖尿病)と肝障害」より
慢性肝炎、肝硬変をはじめとする肝疾患患者では、耐糖能異常が少なからず認められることが知られている。しかし、両疾患の関連についてはいまだ不明な点が多い。本ワークショップでは、C型慢性肝炎と糖尿病、脂肪肝などとの関連について、多くの興味深いデータが報告された。その中から、糖尿病との関連に注目した報告を紹介する。
C型慢性肝炎患者において糖代謝異常はどのくらいの頻度で認められるのだろうか。長崎大学医学部歯学部附属病院第一内科の田浦直太氏らは、肝生検でC型慢性肝炎または肝硬変と診断された83例に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行った。その結果、25%が糖尿病、26%が境界型と診断された。
インスリン抵抗性を示唆するHOMA-R2.5以上の症例は52%で、HOMA-R 2.5未満群に比べ、糖尿病、肝線維化進展(F3〜4)が有意に多く認められた。HOMA-Rあるいは糖代謝異常の程度は、これまでにHCVコア抗原量との関連が示唆されていたが、今回の検討では関連性は認められなかった。また、HOMA-R2.5以上に寄与する因子について多変量解析を行うと、肝線維化進展だけが残った。さらに、肝線維化の進展に伴って糖負荷前および負荷後のインスリン抵抗性が増大することもわかったという。
一方、糖尿病患者の中にC型肝炎はどのくらい存在するのか。大分大学大学院分子機能制御分野の織部淳哉氏らは、複数の施設の糖尿病(2型)外来患者におけるHCV感染率を検討した。HCV抗体陽性率は4〜33%と、施設により差がみられたが、いずれも大分県の節目検診(1%)や大分市検診施設(0.9%)に比べると明らかに高率だった。
C型慢性肝炎と耐糖能異常が何らかの形で密接に関連していることが示唆されたが、両疾患が関連するメカニズムについてはどう考えればよいのだろうか。
愛媛大学医学部第3内科の小西一郎氏らは、C型慢性肝炎患者の耐糖能異常を規定する因子について検討した。C型慢性肝炎患者206例で75gOGTTを行うと、20%が糖尿病、19%が境界型。田浦氏らの報告と同様、肝線維化が進展するほどHOMA-Rが高くなったほか、75gOGTT 120分値も高値となった。HOMA-Rはさらに、肝の壊死・炎症の程度が強いほど高値を示した。また、脂肪肝があると、75gOGTT前値および120分値、HOMA-Rが高くなった。BMI増加や加齢も耐糖能異常を増悪させた。これらの結果から、小西氏は「C型慢性肝炎において、肝の炎症、線維化はインスリン抵抗性を惹起する因子であり、脂肪肝の合併、BMI増加、加齢は耐糖能異常の増悪因子と考えられる」と結論した。
これに対して、市立奈良病院消化器科の角田圭雄氏らは、非肥満、血糖正常かつ線維化が軽度であっても、C型慢性肝炎の30%でインスリン抵抗性が認められること、HOMA-Rが肝の鉄蓄積量に応じて増大することを報告。非肥満、血糖正常例におけるインスリン抵抗性は肝の鉄蓄積と関連するという考え方を示した。
C型慢性肝炎に糖尿病が合併すると、肝炎から肝細胞癌への経過にどんな影響があるのか。金沢大学医学部附属病院消化器内科の喜多裕樹氏らは、IFN療法未施行または無効のC型慢性肝炎68例(輸血後肝炎発症例)を、2型糖尿病合併群(40例)と非合併群(28例)に分けて予後を検討した。その結果、糖尿病合併群、特に血糖コントロール不良例あるいは肥満合併例では、肝炎発症から肝硬変までの期間が有意に短いことがわかった。糖尿病合併群ではさらに、肝炎発症から肝細胞癌発生までの期間、および肝関連死までの期間も有意に短縮していた。
糖尿病の合併はこのようなC型慢性肝炎の自然経過のみならず、抗ウイルス治療の成績にも悪影響を及ぼすというデータも報告された。前出の小西氏らによるもので、IFN/RBV併用療法の著効(SVR)率は糖尿病合併群10%、非合併群44%と、糖尿病合併群で有意に低かった。また、HbA1c 6.5%以上の群では6.5%未満の群に比べてSVR例の割合が有意に低かった。このことから、小西氏は「C型慢性肝炎患者に対する生活習慣対策が抗ウイルス治療にも有益な効果をもたらすことが期待される」と述べた。


