C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

第9回日本肝臓学会総会ランチョンセミナー

C型肝炎に対する最強治療の検証 ―遺伝子研究からLandmark Trialsまで―

(写真)国家公務員共済組合連合会 虎の門病院副院長 熊田博光氏 (写真)山梨大学医学部 第一内科教授 榎本信幸氏

  • 左:山梨大学医学部 第一内科教授
    榎本信幸氏
  • 右:国家公務員共済組合連合会 虎の門病院副院長
    熊田博光氏

C型慢性肝炎の難治例であるC型肝炎ウイルス(HCV)のジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対するペグインターフェロンアルファ2b(PEG-IFNα-2b、商品名:ペグイントロン®)/リバビリン(RBV、商品名:レベトール®)併用療法が日本で認可されてから1年が経過しようとしている。一般診療の現場でどのような有効性が示されるのか興味の持たれるところだ。その一方で、既に完了した国内開発試験の成績のさらに詳細な解析も行われ、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の有効性に影響を及ぼす因子の詳細も明らかになってきた。
本ランチョンセミナーでは、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の臨床成績と基礎的研究をめぐる最近の知見について、山梨大学医学部第一内科教授の榎本信幸氏が講演を行った。本セミナーの座長は国家公務員共済組合連合会虎の門病院副院長の熊田博光氏が務めた。

ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例の中でもSVR率を分ける因子が存在

(写真)榎本氏はまず、山梨県で同氏の施設を中心に実施されているC型慢性肝炎のPEG-IFN/RBV併用療法に関する多施設共同研究―Yamanashi Peginter-feron Ribavirin Study(Y-PERS)の成績を紹介した。
2003年12月以降にIFN治療を開始した症例が対象で、2005年8月までの登録症例は258例。うち7割がジェノタイプ1であった。ジェノタイプ1の症例に関しては、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法が認可された2004年12月以降はほぼ全例に同療法を実施している。
PEG-IFNα-2b/RBV併用療法は導入から1年に満たないため、まだ最終的な治療効果は判断できない。しかし、治療開始後半年間のウイルス陰性化時期をみれば、その後のウイルス学的著効(SVR)率を予測できることが知られている。そうしたデータに基づき、榎本氏はPEG-IFNα-2b/RBV併用療法による48週後のSVR率を予測した。その際、同氏らはHCV RNAのIFN感受性決定領域(ISDR)の変異がウイルス学的反応に影響を及ぼすことを突き止めており、その変異の違いを考慮してSVR率を予測した。その結果、高感受性であるISDR変異型では100%近くまで、中間型では約60%、野生型でも約40%のSVR率がそれぞれ得られると推定された。
こうした中間的な解析結果を踏まえ、榎本氏は「ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例の中にも、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法が著効するものと効きにくいものがある。効きにくいタイプに対する対策が今後は重要になる」と指摘した。

ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例の50〜60%が治癒可能な時代に

PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の臨床成績を示す完全なデータは、今のところ日本では国内開発試験のものしかない。榎本氏は、臨床試験の際のデータを中心に、国内開発試験で対象となった746例についての解析結果を紹介した。
まず、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例(≧100KIU)に対するSVR率であるが、初回投与例に関しては、最初の臨床試験(CHC500スタディ)の成績では43.1%であったが、大阪大学が中心となって実施した臨床薬理試験では63.6%という成績であった(図1)。すなわち、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法は、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対して高いSVR率が得られる治療法であることがあらためて示された。
次に再燃例、すなわち過去にIFN療法がいったん奏効したが、その後、再燃した症例に対して、SVR率は低下するどころか、むしろ初回投与例よりSVR率が高く、両試験ともに60%以上のSVRが示された(図1)。つまりIFN単独療法でウイルスがいったん消失するような症例は、もともとHCVに対する感受性が高く、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法で高いSVR率が望めることが示された。
IFN単独療法が奏効しなかったIFN無効例については、CHC500スタディでは19.2%であったが、臨床薬理試験では53.8%という高いSVR率が得られた(図1)。すなわち、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法は、IFN無効例に対してもかなりのSVR率が期待できることが判明した。
以上がこれまでの国内試験から得られた結論である。ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対する治療成績の変遷をみると、IFNα-2b単独療法で2%に過ぎなかったSVR率が、IFNα-2b/RBV併用療法では20〜30%まで向上し、現在、PEG-IFNα-2b/RBV併用により50〜60%まで到達したという状況にある。
一方、「ジェノタイプ1かつ高ウイルス量」以外の症例、つまり1型で低ウイルス量(<100KIU)の症例や2a/2b型の症例の治療成績の向上はさらに著しい。榎本氏は、「PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の登場により、2a/2b型症例全体で恐らく90%近いSVR率が期待できるところまできており、少なくとも2a/2b型症例に関しては、治療法の選択を間違わなければ、ほぼ100%治癒可能な状態になっている」と述べた。

図1 ジェノタイプ1型かつ高ウイルス量症例に対するSVR率

(図1)ジェノタイプ1型かつ高ウイルス量症例に対するSVR率

*:大阪大学 平松直樹ほか:第41回日本肝臓学会総会(2005年大阪)

SVR率に影響を及ぼす因子としては治療完遂が重要

では、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法でSVRが得られない症例とはどのような症例なのか。榎本氏は、この点について国内開発試験のレトロスペクティブな解析から明らかになったデータを紹介した。
まず、SVR達成に寄与した因子の解析からは、1)投与中止がないこと、2)男性であること、3)年齢が若いこと、4)RBVのクリアランス(CL/F)が高いこと、5)肝線維化が軽度であること、などがSVR率の向上に寄与する因子であることが判明した()。

表 PEG-IFNα-2b/RBV併用療法のSVR寄与因子

(表)PEG-IFNα-2b/RBV併用療法のSVR寄与因子

治療完遂とSVR率の関係を詳しくみると、全体として約50%だったSVR率が、投与量を減量した症例を含む治療完遂群では約60%に達することが判明した(図2)。逆に何らかの段階で治療を中止した症例では、SVR率は約20%と大きく落ち込むことも判明した。したがって、治療中止に至るような症例を早期に予知して、その対策を講じることが、最終的なSVR率を上げるために重要であることが示された。

図2 治療完遂とSVR率

(図2)治療完遂とSVR率

治療中止に影響する要因としては、年齢が重要な役割を演じていた。20〜30歳代の中止率が13.7%だったのに対し、40〜50歳代では20.2%、60歳代では24.7%と上昇していたのである。高齢であることが治療中止に影響する重要な要因であることがこの解析から示された。
実際に年齢層別にSVR率を比較してみると、年齢の上昇とともにSVR率の低下が示された。当然この数字は高齢者の治療完遂率の低さを反映している。榎本氏は「若いうちは多少条件が悪くても反応がよい。このデータは若いうちに治療することの重要さを示していると同時に、今後、高齢者をどう治療していけばよいのか、対応の重要さを示唆するデータと言える」とした。

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