第9回日本肝臓学会総会ランチョンセミナー
では、投与中止の理由にはどのようなものがあるのだろうか。プロトコールどおり投与を完遂できなかった症例を理由別に分けてみると、「ヘモグロビン(Hb)値の低下」と「好中球数の減少」が最も多く、全体の約40%を占めており、その他の60%近くは様々な「有害事象」、すなわち臨床検査値異常、ホルモンの異常、精神障害、神経系障害、循環器障害などの予測が難しい副作用が原因で、投与中止に至っていた(図3)。ヘモグロビン値と好中球数などの血球減少は工夫すれば避けることのできる副作用であることから、今すぐ対処可能な改善項目として重要と考えられた。また、血小板減少が中止理由になった症例は1例のみで、きわめて少ないことも判明した。
図3 投与中止の理由

- * その他の臨床検査値異常、内分泌系、
精神障害、神経系障害、
心臓障害など11分野の有害事象
投与中止の理由別にSVR率を調べたところ、SVR率が低かった順に、「好中球数減少」が8.3%、「Hb値低下」が20.0%、「有害事象」が29.7%となっていた。これらの項目間のSVR率で大きな差がついた理由は、投与中止に至るまでの日数が各項目で違っており、「好中球数減少」では35.5日、「Hb値低下」では112日、「有害事象」では140日となっていた。つまり、より早期に投与中止に追い込まれるほどSVR率が低かったということである。
投与中止理由と年齢の関係をみると、PEG-IFNα-2bの減量を余儀なくされた症例の割合は年齢による有意差はなかったが、RBVの減量を余儀なくされた症例の割合は20〜30歳代や40〜50歳代に比べて60歳代で有意に高いことがわかった。その際、PEG-IFNα-2bのおもな副作用である好中球数の減少やその結果としての投与量の減量は加齢の影響をあまり受けないが、RBVのおもな副作用であるHb値低下やその結果としての投与量の減量は加齢の影響を受けやすいことが判明した。さらに高齢者ではHb値低下が出現するまでの日数も短く、その分だけ減量や中止に至るまでの期間も短かった。
PEG-IFNα-2bによる白血球数の減少は年齢の影響を受けなかったが、その理由として、同薬が体重別の用量設定で投与されていることが効果を挙げていると考えられた。実際、固定用量設定である従来型IFN製剤を投与していたときは、体重の軽い症例ほど白血球数が有意に減少する傾向があったが、体重別用量設定となったPEG-IFNα-2bではそうした傾向は認められていない(図4)。この点に関して榎本氏は、「好中球数の減少においては、体重別の用量設定で投与することにより、投与初期の好中球減少による投与量減量や投与中止を阻止することにつながり、ひいてはSVR率向上につながると考えられる」と述べた。
図4 体重別の白血球数の推移

一方、Hb値の低下に関しては、RBVでも体重別用量設定が行われているにもかかわらず、高齢者でHb値低下を招きやすいことが判明した。この詳細な理由については不明だが、RBVの血中濃度にその原因があるとする報告がある。RBVの血中濃度が一定のレベル(3,000ng/mL)を超えるとHb値の低下が大きくなり、その結果、RBVの減量・中止を余儀なくされる症例が増加することがわかってきた。最終的には表に示されたように、RBVのクリアランス(CL/F)がSVR率に寄与する因子となってしまう。CL/Fは、体重、年齢、性別、腎機能(血清クレアチニン値)などの因子を数値化した計算式で算出される〔CL/F(L/hr)=32.3×体重(kg)×(1−0.0094×年齢)×(1−0.42×性別)/血清クレアチニン(μmol/L)、性別;男性=0、女性=1〕。
実際に年齢別、性別にRBVの血中濃度を観察すると、若年者より高齢者が、男性より女性が、それぞれ血中濃度が上がりやすいことが示されており、具体的には、50歳以上の女性や60歳以上の男性で、4週時の血中濃度が2,500ng/mL以上を示すことから、これらの症例ではRBVを1カプセル減らしたうえで投与開始することが考えられる(図5)。これらのデータを受けて、榎本氏は、RBVに関しては、体重別の用量設定だけでなく、性別、年齢、腎機能を考慮した用量設定の工夫がさらに必要なのではないかと述べた。
図5 年齢別・性別のRBV推定血中濃度(投与4週時)

以上、日本における国内開発試験の解析結果を総括して、榎本氏は、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の導入により、C型慢性肝炎症例全体では70%のSVR率が得られるようになると高く評価し(図6)、「ジェノタイプ1かつ高ウイルス量の症例で50〜60%、それ以外の症例では約90%のSVR率が期待できるところまできた」と表明した。
図6 日本におけるウイルス陰性化率の変遷

また、有効性の向上には治療の完遂が最も重要で、そのためには投与初期の減量・中止に大きく影響する血球減少に注意することが大切だと強調。その際、PEG-IFNα-2bに関しては、同薬の体重別用量設定が奏効し、白血球数低下に及ぼす年齢の影響はほとんど認めないが、Hb値低下に及ぼすRBVの影響については、体重以外にも、年齢、性別、腎機能の影響を大きく受けることから、「体重別用量設定のほかにも、今後さらにきめ細かい用量設定の必要性が検討されるべきではないか」と述べた。
最後に榎本氏は、IFNやRBVによる治療がHCV感染に奏効する機序に関する最近の知見を紹介した。
臨床用量のRBVは単独ではHCVを抑制しないが、IFNと併用することにより、IFNの抗HCV効果を約10倍に増強することがわかってきた。その機序として、RBVがHCV遺伝子の変異を増やし、とりわけIFN感受性決定領域(ISDR)の変異を増強させ、それがIFNの抗HCV効果増強につながっている可能性が報告されている(朝比奈氏ら)。NS5B(HCV複製にかかわるRNAポリメラーゼ)の変化を調べた検討では、RBV投与によりNS5B遺伝子にアミノ酸変異が生じることも報告されている(朝比奈氏ら)。NS5BにはRBVが作用する核酸トンネルが存在しているが(図7)、実際にIFN/RBV併用療法を実施した臨床例において、この付近のアミノ酸配列に一定の変異があった症例でSVR率が高かったことが、榎本氏の検討でも確認されている。
また、HCV増殖細胞を用いた検討からは、HCV増殖をコントロールしている遺伝子の大部分がIFN誘導遺伝子(ISG)であり、細胞内HCV増殖能は自然免疫・IFN系により決定されていることも明らかになってきた。
以上、最近の基礎研究の成果を整理すると、RBVは遺伝子変異の促進作用によりIFNの抗HCV効果を高めており、その標的としてNS5Bが考えられること、また、HCV増殖は自然免疫・IFN系によってコントロールされていることなどから、HCV持続感染のメカニズムが解明されつつあるという。
図7 IFN/RBV併用療法の治療効果に関与するNS5Bの変異は核酸トンネルの入り口に面している



