C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

C型慢性肝炎治療の新潮流

ペグインターフェロンα-2b(PEG-IFNα-2b)とリバビリン(RBV)の併用療法の適応が拡大されたことで、C型慢性肝炎に対する治療の幅が広がった。そこで、実際にどのような効果がもたらされているか、今後の課題は何か、探ってみた。

C型慢性肝炎治療に新たな選択肢が登場

PEG-IFNα-2bとリバビリン併用療法の適応拡大

最近、PEG-IFNα-2bとRBVの併用療法の適応が拡大され、初回治療ではジェノタイプにかかわらず高ウイルス量症例に対して、再治療では全ての症例に対してPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が行えるようになった。
そこで、その意義と今後の課題について、虎の門病院副院長の熊田博光氏と埼玉医科大学消化器・肝臓内科教授の持田智氏に伺った。

ジェノタイプ2かつ高ウイルス量症例におけるSVR率は88.4%

本邦におけるC型慢性肝炎をジェノタイプ別にみると、ジェノタイプ1bが約70%、2aが約20%、2bが約10%を占めている。この内、難治性とされるジェノタイプ1bかつ高ウイルス量症例(100KIU/mLまたは1Meq-/mL以上)に対しては、PEG-IFNα-2bとRBVの併用療法(48週間)で約50〜60%が治癒するようになってきた。一方、ジェノタイプ2a、2bの高ウイルス量症例に対しては、PEG-IFNα-2aの単独治療によって約76%の症例が治癒するが、1年間治療を続けると共に週1回の採血を行う必要があるため、患者の負担はかなり大きかった。しかし、昨年末にPEG-IFNα-2b/RBV併用療法(24週間)が認められ、約半年の治療で88.4%の症例が治癒するようになった(図1)。そこでまず、その全国治験の成績を紹介する。

図1 ジェノタイプ2a、2b、100kcopy/mL以上の治療法別著効率

(図1)ジェノタイプ2a、2b、100kcopy/mL以上の治療法別著効率

熊田氏 提供

表 試験概要

(表)試験概要

熊田氏 提供

対象はジェノタイプ1かつ高ウイルス量以外のC型慢性肝炎症例で、PEG-IFNα-2bとRBV併用投与の有用性がIFNα-2bとRBV併用投与に対して劣らないこと(非劣性)を検証すると共に、その安全性についても評価している(表、図2)。その結果、投与終了後24週時のウイルス陰性化率(SVR率)は、IFNα-2b+RBVが75.5%、PEG-IFNα-2b+RBVは88.9%であり、ジェノタイプ2かつ高ウイルス量症例におけるPEG-IFNα-2b+RBVのSVR率は88.4%であった(図3)。
また、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法のジェノタイプ別SVR率をみると、ジェノタイプ1bかつ低ウイルス量症例では80.0%、ジェノタイプ2aでは91.2%、2bでは83.3%であった(図4)。副作用も同療法のほうが少ないことが明らかになっている。

図2 「ジェノタイプ1かつ高ウイルス量」以外のC型慢性肝炎患者を対象としたPEG-IFN α-2b/RBV併用投与臨床試験

(図2)「ジェノタイプ1かつ高ウイルス量」以外のC型慢性肝炎患者を対象としたPEG-IFN α-2b/RBV併用投与臨床試験

熊田氏 提供

図3 PEG-IFNα-2b/RBV併用療法における投与終了後24週時のウイルス陰性化率(SVR率)

今回の適応症例を対象とした場合のSVR率

(図3)PEG-IFNα-2b/RBV併用療法における投与終了後24週時のウイルス陰性化率(SVR率)

*治験結果のn数より、初回低ウイルス症例を除いている。
熊田氏 提供

図4 ジェノタイプ別のウイルス陰性化率(SVR率)

(図4)ジェノタイプ別のウイルス陰性化率(SVR率)

熊田氏 提供


週1回の治療を半年続けるだけで、約90%の患者さんが治癒する時代に

(写真)熊田 博光氏

熊田 博光氏

この成績によって、IFN未治療のジェノタイプ2かつ高ウイルス量症例と、IFN治療が無効または治療後に再燃したジェノタイプ1の低ウイルス量およびジェノタイプ2症例に対して、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法(24週間)が認められた。
PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の適応拡大について、虎の門病院副院長の熊田博光氏は「週1回の治療を半年続けるだけで、約90%の患者さんが治癒するわけですから、非常に大きな意義があると思います。肝機能が落ちついていて自覚症状がない若い患者さんも積極的にこの治療を受けていただきたい。いずれ肝硬変から肝癌に進行する不安を抱えて生きるより、週1回半年の治療でウイルスを排除すれば、その後は定期検診だけで過ごせます」と語る。
ここで、C型慢性肝炎に対する今後の治療法を整理すると、初回治療において、ジェノタイプ1bかつ高ウイルス量症例に対してはPEG-IFNα-2b/RBV併用療法(48週間)が、ジェノタイプ2かつ高ウイルス量症例に対してはPEG-IFNα-2b/RBV併用療法(24週間)が第1選択となる。また、低ウイルス量症例に対しては、PEG-IFNα-2a単独療法あるいは通常のIFNの在宅自己注射が第1選択となる。
一方、再治療に関しては、すべての症例に対してPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が行えるようになったが、「再治療については、初回治療でウイルスが排除できなかった原因をよく考慮して治療方針を決めることが重要です」と熊田氏は指摘する。


たとえ肝炎の症状がなくても、抗ウイルス治療を受けることで将来の肝癌発症を予防できる

(写真)持田 智氏

持田 智氏

埼玉医科大学消化器・肝臓内科教授の持田智氏も「従来の治療でウイルスを排除できなかったジェノタイプ1bかつ低ウイルス量の患者さんやジェノタイプ2の患者さんにPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行えるようになったことは、非常に大きな意味をもっています」と、今回の適応拡大を評価する。
従来、再治療を行うに当たっては、その副作用や治療期間、さらに治療費などの面で躊躇するケースも多かったという。しかし、週1回半年の治療で約90%の患者にウイルスの陰性化がみられるなら、「再治療を強く勧めることができる」と語る。ジェノタイプ1bかつ高ウイルス量以外の患者にPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行うと、治療開始4週までに約90%で血清ウイルスが陰性化し、その大部分は治癒にいたる。早期に治療効果を判定することが可能であり、ウイルス陰性化の時期が遅い患者に対しては24週以降もIFN治療を続ければより高い治療効果を得られる可能性がある。また副作用に対する迅速な対応によって治療を完遂できる患者は徐々に増えている。したがって、実際の診療ではジェノタイプ1bかつ高ウイルス量の患者以外では、ほぼ全例でウイルスを排除することも不可能ではないと考えられる。
しかし一方で、RBVの併用が難しい患者もいる。「高齢者や、糖尿病、高血圧症等の生活習慣病を合併している人にはRBVの併用は慎重に行う必要があります」と持田氏は指摘する。
そこでC型慢性肝炎治療における今後の問題点を整理すると、以下のようになる。
まず、現在最も優れた治療法といわれるPEG-IFNα-2b/RBV併用療法でも治癒しないジェノタイプ1bかつ高ウイルス量の患者が約50%いる。こうした患者にはIFNの少量長期投与によって発癌を防ぐ治療が勧められ、またウイルスの排除を目指した新たな治療法の開発も望まれている。一方、肝硬変あるいは肝癌を併発した患者をどのように治療していくか、年齢や合併症によってIFNあるいはRBVを投与できない患者をどのようにフォローしていくかも大きな課題である。
さらに、肝機能異常が軽度の場合は自覚症状もないため、抗ウイルス治療を1回も受けたことがない患者がまだ多くいることも大きな問題である。これらの患者はいずれ肝硬変から肝癌に進展する可能性があり、積極的に治療を受けさせるにはどうすればよいかが課題である。
こうした点について持田氏は「一般開業医の先生の認識を変えていただくことが最も重要です」と指摘する。一般開業医の中には、5年くらい前の知識をもとに「IFN治療は副作用も多く治癒率も低い」と考えている医師も多いという。日本肝臓学会では都道府県ごとに一般開業医を集めた講演会を行っているが、参加する医師は一定の関心があるが、参加しない医師にも最近の治療法の実態を知ってもらうことが重要となる。
「PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の普及によって治癒率が向上し、C型慢性肝炎は治る病気であるという評判が広まれば、関心の薄い医師も認識をあらため、患者さんに抗ウイルス療法を積極的に勧めるようになるのでは」と、持田氏は期待している。
C型慢性肝炎の治療については、専門医と一般開業医の知識に大きな差が存在する。そして、その差が治療上の違いをもたらす可能性があるなら、早急に知識の差を埋めることが最も重要な課題といえる。


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