C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

C型慢性肝炎治療の新潮流

C型慢性肝炎治療の現状と課題

開業医の立場から

大井手クリニック院長 大井手弘純氏に聞く

2002年からC型慢性肝炎およびB型慢性肝炎に対する節目検診が行われているが、治療の必要性がある患者の多くが適切な治療を受けていないのが現状といわれている。そこで、C型慢性肝炎患者に対して、開業医はどのように対応し、どのような問題を抱えているのかを大井手クリニックの大井手弘純院長に伺った。大井手院長は東京都練馬区の大泉学園で開業しているが、肝臓の専門医として順天堂練馬病院でも外来を担当している。

患者の社会・経済的状況を考慮することが非常に大切

(写真)大井手弘純氏

大井手弘純氏

治療が必要な患者の多くが適切な治療を受けていないという現状について、大井手氏は2つの問題点を指摘する。1つは患者側の理由、もう1つは一般開業医の肝炎に対する認識不足である。
現在、大井手氏は、クリニックと順天堂病院の外来でC型慢性肝炎患者に対する抗ウイルス治療を行っているが、本来ならもっと多くの患者に抗ウイルス治療を行うべきだと考えている。しかし、多くの患者に自覚症状がないため、PEG-IFN-α2b/RBV併用療法によって週1回の外来治療ですむようになっても、週1回1年間通院できる人は限られていると指摘する。特に中間管理職で社会的にも責任がある人はC型慢性肝炎の治療を行っていることがマイナスの評価につながるとの恐れや、また経済面でもかなりの負担になるため躊躇することも多いという。
しかし、たとえ自覚症状がなく肝機能が安定していてもウイルスを排除できなければ、いずれ肝硬変から肝癌へと進展する。
「C型慢性肝炎の自然経過をきちんと説明して、治療の重要性を認識してもらうことは非常に重要ですが、それだけでは解決しません。たとえ認識しても周囲の状況が許さないケースが多いからです」
そこで、患者が抗ウイルス療法を受けない理由をきちんと調査する必要がある、と大井手氏は指摘する。「その理由が経済的なものであれば医療費を見直し、仕事に支障があるなら、社員の治療を企業に義務づけるなど、患者さんの生活を考慮した方針を立てないと、治療を受ける患者さんは決して増えない」と語る。


専門医の治療を積極的に勧めるのが開業医の責任

開業医にも問題はあるという。
「たとえばALTが70〜80IU/Lあっても、大丈夫だからほっといて平気だよ、という開業医はまだかなりいます」
一般に日本の多くの施設では、ALTの正常範囲を35〜40IU/L以下としているが、最近、イタリアで大規模な検討が行われ、男性では30IU/L以下、女性では20IU/L以下を正常値とするのが望ましいという結果が得られている。したがってALTが70〜80IU/Lもあると肝機能が悪化する可能性は非常に高い。
「つまり、肝臓の専門医ではない一般の開業医が肝炎の病態と自然経過をきちんと認識する必要があります。そのためには、地域の医師会や基幹病院が中心となって積極的に勉強会を行うことが重要です」
また、抗ウイルス治療を完遂するには、個々の患者の症状にあわせた微妙なさじ加減が重要となるため、IFN治療の経験がない開業医には難しい。
「そこで、肝機能が正常でも肝炎ウイルス患者さんには1度は専門医の治療を受けるように積極的に勧めることが開業医としての責任です」 

開業医でも安心して治療できる薬剤の開発を

最後に、C型慢性肝炎治療における今後の課題について伺った。
「日本に最も多いジェノタイプ1かつ高ウイルス量の患者さんに対して、最も強力であるといわれるPEG-IFNα-2b/RBV併用療法でもウイルスを排除できるのは50〜60%です。つまり残りの40〜50%はウイルスを抱えたまま生きていくことになります。また、年齢や合併症、副作用、社会・経済的理由でIFN治療を受けられない患者さんもたくさんいます。こうした患者さんをどのようにフォローして肝硬変や肝癌への進行を抑制するかが今後の大きな課題です。また、通院期間、副作用、薬価などの面では、一般開業医でも安心して治療できる安くて安全で、より有効な薬剤の開発が求められます」
本来、開業医とは個々の患者の全身を診て、気になる点があれば積極的に専門医の受診を勧めることがその役割である。そのためには信頼できる専門医との確かなネットワークをもつことが重要となる。
現在、病診連携の重要性が指摘されているが、単にシステムとしての病診連携でなく、患者の気持ちに沿った病診連携が求められているというのが、大井手氏の見解である。

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