C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

座談会 −高齢者におけるウイルス排除をいかに高め、肝発癌を抑えるか−

本邦においてもペグインターフェロンアルファ-2b(PEG-IFNα-2b;商品名ペグイントロン®)とリバビリン(RBV;商品名レベトール®)の併用療法が保険適用となり、C型慢性肝炎治療の第1選択となって1年が経過した。しかしながらC型慢性肝炎患者には高齢者が多く、治療上さまざまな問題点を抱えている。そこで、高齢のC型慢性肝炎患者に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用療法のポイントについてご討論いただいた。司会は大阪大学大学院消化器内科学教授の林紀夫氏である。

高齢者では肝線維化が軽度でも肝癌の発症頻度が高い

林  :本邦では1992年からC型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)治療が始まり、2004年12月にはPEG-IFNα-2bとRBVの併用療法が保険適用となったことで、欧米におけるスタンダードな治療方法が、本邦でも行えるようになりました。その結果、本邦に最も多いジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対する48週併用療法のウイルス学的著効(SVR)率は約60%まで高まりました(図1)。しかし欧米と異なり、高齢者が非常に多いことが、本邦におけるC型慢性肝炎患者さんの特徴といえます。そこで本日は、主に高齢のC型慢性肝炎患者さんに対する治療のポイントについて、ご意見を伺いたいと思います。
まず、C型慢性肝炎患者さんの背景についてお話ください。

図1 日本におけるウイルス陰性化率の変遷

(対象:ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例)

(図1)日本におけるウイルス陰性化率の変遷

泉  :当施設で1992〜98年にIFN治療を受けた患者さんの平均年齢は52歳で、65歳以上の方は14%でしたが、1999〜2004年の平均年齢は57歳で、65歳以上の方が30%を占めています。したがって、5年前と比べて約5歳高齢化し、65歳以上の高齢者が占める割合も約2倍になっています。

豊田:私どもの施設でも同様の傾向がみられ、IFN治療が始まった1992年とRBV併用療法が始まった2001年を比較すると、患者さんの平均年齢に約10歳の開きがあります。

林  :高齢者の自然経過には、どのような特徴がみられますか。

泉  :従来、高齢者の発癌率はあまり高くないといわれていましたが、70歳以上の患者さんに肝癌の発症がかなり多いという臨床的印象がありましたので、当院のデータをまとめてみました。高齢者を60歳以上にするか、65歳以上にするかは議論の分かれるところですが、65歳を境に累積発癌率を比較すると、5年間のフォローで65歳未満は3%、65歳以上は10.2%、10年間のフォローでは同じく8.6%対23%と、高齢者の発癌率は非常に高いことが明らかになっています。しかし、高齢者では肝の線維化が進展して発癌リスクの高い方が多いと考えられたので、F因子で層別化して経過を観察したところ、高齢者ではF1でも肝癌の発症が高率にみられました(図2)。従来、高齢者に対する抗ウイルス療法を疑問視する意見もありましたが、このデータをみますと、高齢者でも肝疾患が生命予後に影響する可能性が高い患者さんに対しては、積極的にIFNによる抗ウイルス療法を行う必要があると思っています。

図2 IFN治療後の累積肝発癌率

(高齢者およびF因子により層別化した比較)

(図2)IFN治療後の累積肝発癌率

林  :ご指摘のように、高齢者では肝機能が正常で線維化があまり進展していなくても高率に肝癌の発症がみられるのが特徴だと思われます。女性についてはいかがですか。

泉  :従来、女性は肝癌になりにくいといわれていましたが、70歳以上で比較すると、初回の肝癌患者さんの男女比は1:1ですから、男性と同じように肝機能が正常で肝の線維化が進展していない女性患者さんでも、70歳を超えると発癌のリスクは非常に高くなると考えられます。

林  :かつて私たちは、IFN治療によってウイルスの排除が起こらなくても、いったんウイルスが消失した再燃例や肝機能が正常な症例では発癌をある程度抑制できるというデータをもっていました。しかし65歳以上の高齢者に限定して再検討したところ、高齢者ではウイルスが排除されない場合は肝癌の発症を抑制できないという結果でした(図3)。一方、高齢者に対する抗ウイルス療法の治療効果は比較的低いため、肝庇護剤等で治療を行っている方も多いのですが、肝癌の発症を考えますと、何とかウイルスを排除したいというのが、私たちの偽らざる願いです。

図3 高齢者C型慢性肝炎(65歳以上)における累積肝発癌率

(図3)高齢者C型慢性肝炎(65歳以上)における累積肝発癌率

Hiramatsu N. et al. :Nippon Rinsyo. 2004 ; 62(suppl 7)

高齢者におけるPEG-IFNα-2b/RBV併用療法

林  :次に、高齢のC型慢性肝炎患者さんに対する実際の治療方法について伺います。まず、高齢者に対する治療の課題についてコメントしてください。

泉  :高齢者にはIFNが効きにくいといわれていますので、まずその点を検討してみました。図4はPEG-IFNα-2b/RBV併用療法における初期の抗ウイルス効果(early virological response;EVR)を65歳を境に比較したものですが、やはり65歳以上ではEVR達成率は低下していました。つまり、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法という最も強力な治療法をもってしても、若年者と比べると反応性は低下する点が最も懸念されます。

図4 PEF-IFN α-2b/RBV併用療法におけるEVR達成率

(投与開始12週時点のウイルス量2log低下またはウイルス陰性化)

(図4)PEF-IFN α-2b/RBV併用療法におけるEVR達成率

豊田:私どもの施設では65歳以上の症例があまり多くないので、60歳を境に検討したところ、高齢者の方が15ポイントほどSVR率が低くなっていました。その原因の1つは副作用による治療の中止です。したがって、いかに治療を完遂できるかが、高齢者にとって非常に重要な課題だと考えています。

林  :副作用による中止例がなければ、SVR率は若年者と変わらないと思われますか。

豊田:たとえ治療を完遂できても高齢になるほど、SVR率は低下すると思います。ただし、治療の継続率が上がれば、その分の目減りを抑えることができます。

林  :PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の開発治験には高齢者がかなり入っていますが、その方たちの有効性や副作用はどうでしたか。

豊田:高齢者における中止例は、IFNα-2bよりPEG-IFNα-2bのほうが少ないので、忍容性という点ではPEG-IFNα-2bのほうが優れていると思われます。ただし、同じPEG-IFNα-2b投与群の中でも若年者と比べて高齢者のSVR率は低くなっています。

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