C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

C型肝炎治療におけるPEG-IFN α-2b/リバビリン併用療法の可能性

ジェノタイプ1かつ高ウイルス量に対して60%のSVR率

林  :本邦において、C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)の単独療法(24週)が始まったのは1992年です。当初、難治例であるジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例のSVR率は2〜3%と非常に低い状況でした。その後、IFN投与期間制限の撤廃やIFNα-2bとリバビリン(RBV)の併用などによって治療効果は徐々に改善されましたが、IFNα-2b/RBV併用療法(24週)でも難治例のSVR率は約20%にしかすぎませんでした。しかし、2004年12月にPEG-IFNα-2bとRBVの1年間の併用療法が始まり、難治例のSVR率は約50%と大幅に高まりました。IFN治療が始まってからすでに14年が経過し、その間にSVR率はこのように、大きく向上しましたが、肝癌の死亡率は依然として増加傾向にあり、今後解決しなくてはならない問題点もまだ残っております。そこで本日は、この残された問題点について、ご討論いただきたいと考えております。

最初に、PEG-IFN製剤について簡単に解説してください。

吉岡:PEG-IFN製剤は、IFNに高分子のポリエチレングリコール(PEG)を結合させて半減期を延ばしたもので、週1回の投与で十分な血中濃度を維持できるため、患者さんのメリットは非常に大きいと思います。また、従来のIFNと比較して血中濃度がスパイク状にならないので、自覚的副作用が非常に軽減されたことも特徴といえます。現在、PEG-IFN製剤には12KDのPEGを結合させたPEG-IFNα-2bと40KDのPEGを結合させたPEG-IFNα-2aがありますが、PEG-IFNα-2aと比べてPEG-IFNα-2bは小さい分子量のPEGを結合しており優れた活性を維持する一方で、消失時間が比較的早く治療中の蓄積性が少ないので副作用が発現した場合に減量や中止をすることで素早く対応できるという利点があります(図1)。現在、RBVとの併用療法が認められているPEG-IFNはPEG-IFNα-2bだけです。

図1 排泄と生物学的活性における特性

(図1)排泄と生物学的活性における特性

Caliceti P., Digestive and liver disease 2004;36(Suppl.3):S334-339

林  :従来のIFNと比べてPEG-IFNのほうが抗ウイルス活性は高いと考えていいのでしょうか。

吉岡:本邦における治験の成績をみますと48週間投与した場合のIFNα-2b/RBV併用療法とPEG-IFNα-2b/RBV併用療法の最終的なSVR率はほぼ同等ですから、抗ウイルス活性も同等と考えていましたが、非常にウイルス量が多い症例に限ってSVR率をみると、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法のほうが高いという報告がありますので、抗ウイルス活性はPEG-IFNのほうが高い可能性はあります。

林  :次に、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の国内臨床開発試験の成績について解説してください。

片野:対象は難治例といわれるジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例で、全体のSVR率は47.6%、48週間投与を減量なく完遂した症例では62.5%と、従来の治療と比べるとかなり高いSVR率が得られています。ただし治療を途中で中止するとSVR率は低下します。また、過去のIFN治療で一旦はウイルスが消えた症例(再燃例)のSVR率も62.6%と、従来の治療法と比べるとかなり高い成績が得られています。

図2 投与終了後24週目のウイルス陰性化率

(図2)投与終了後24週目のウイルス陰性化率 シェリング・プラウ社内資料

シェリング・プラウ社内資料

林  :PEG-IFNα-2bあるいはRBVを減量しても治療を継続できれば高いSVR率が得られる点がこの治療の大きな特徴の1つだと思われます。そこで我々は、このPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が有効であった症例と無効であった症例の背景因子の違いを検討するため、難治例を対象とした臨床薬理試験を行っています。その成績をみますと、全体のSVR率は57.8%、48週間の投与を完遂した症例では65.2%という非常に高いSVR率が得られています(図2)。

gradingが軽い症例においてもPEG-IFNα-2b/RBV併用療法は有効性が高い

林  :熊田先生は非常に多くの症例に対してPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行われていますので、この治療の臨床的印象についてコメントしてください。

熊田:すでに指摘されていますが、従来の治療より自覚的副作用が少ないので、上手にさじ加減を行えば、非常に多くの患者さんが治療を完遂できると思います。また、患者さんの肝組織の線維化(staging)と活動性(grading)を考慮すると、stagingにおいては従来のIFN治療と同じように軽い症例ほどSVR率が高いと思われますが、gradingにおいても軽い症例でSVR率が高いと考えられ、この点はIFN単独療法と異なった印象をもっています。

林  :原則的には、IFN単独療法もRBV併用療法もstagingが進行するとSVR率は低下しますが、我々が最も治療したいF3の症例では、IFN単独療法よりRBV併用療法のほうが治療効果は高い。一方、IFN単独療法はgradingが軽い症例にはあまり効果がみられませんでしたが、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法では、gradingが軽い症例にも有効であるということですね。

熊田:そうです。IFN単独療法は炎症の程度が軽い症例にはあまり効果がないといわれていますが、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法では必ずしもそうではありません。

林  :これは非常に重要な点だと思いますが、この違いはどこに原因があるとお考えですか。

熊田:炎症が軽い症例でもIFN単独療法を長期間行うと有効率が上がるという印象をもっていますので、1つは治療期間が関係していると思いますが、それだけではないと考えています。

林  :gradingが軽い症例においてもSVR率が高いということがPEG-IFNα-2b/RBV併用療法の大きな特徴であり、従来の考え方を根本的に変えなくてはならない非常に大きな点だと思いますので、後ほどALT正常例に対する治療のところで、さらに討論したいと思います。

60歳以上の高齢者に対しては早めに副作用に対応するのが治療完遂のポイント

林  :肝癌の発症を考えますと、最も治療したいのが60歳以上の高齢者ですが、60歳を過ぎると治療効果は下がっていきます。この矛盾をどのように解決すべきでしょうか。

熊田:確かに高齢者になると投与薬剤の減量率や中止率は高くなりますが、たとえ減量しても治療が継続できれば、最終的なSVR率には有意差があるほどの違いはないので、いかに治療を継続するかがポイントだと思います。

林  :臨床試験では投与方法を画一的にせざるを得ませんから、どうしても60歳以上の高齢者のSVR率は下がりますが、通常の診療では最初から投与量を減量するなどの工夫ができますので、個々の患者さんに合わせたきめ細かいさじ加減で治療を継続することは十分に可能だと思われます。逆にそうしなければならないわけですが、皆さんはどのような工夫をなさっていますか。

熊田:初めから投与量を減らすことはしていませんが、臨床検査値が少しでも下がり始めたら、早めに減量して様子をみます。

吉岡:私もスタンダードな投与量から始めて、休薬することがないように副作用には早めに対応しています。しかし今後は、患者さんの状態によっては、治療開始時から投与量を調整する必要があると考えています。

林  :我々の印象では、60歳以上の高齢者では、最初から減量して治療を始めたほうが中断に追い込まれる症例が少ないように思われます。

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