C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

C型肝炎治療におけるPEG-IFN α-2b/リバビリン併用療法の可能性

ALT持続正常例でも肝癌の発症がみられる

図3 米国肝臓学会(AASLD)の
ガイドライン(2004年)

(図3)米国肝臓学会(AASLD)のガイドライン(2004年)

林  :先ほど、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法はgradingが軽い症例にも有効であるというご指摘がありました。そこで次に、ALT正常のHCVキャリアに対して、積極的に治療を行うべきか否か、それぞれのご意見を伺いたいと思います。


図4 発癌率

(図4)発癌率

大垣市民病院

片野:基本的には、肝炎の所見があればALT値に関係なく治療の対象と考えてよいと思います。なぜなら、ALT値が正常でも肝炎が進行している症例もあるからです。実際、米国肝臓学会(AASLD)のガイドラインでは「血清トランスアミラーゼ値に関係なく、肝生検による肝疾患進行の程度をもとにRBV併用療法を開始すべきか否かを検討すべきである」という勧告を2004年に発表しています(図3)。

熊田:ALT正常例を治療するか否かを議論する場合、重要なのは将来肝癌を発症する可能性がどのくらいあるかということです。そこで我々は、経過観察開始後3年間発癌のなかった症例でALT持続正常例(35IU/L以下;125例)とALT異常例(ALT最大値36〜70IU/L;211例)の累積発癌率を10年間にわたって調べたところ、ALT持続正常例では8.0%でした(図4)。この数字を多いと考えるか、少ないと考えるかは、意見の分かれるところだと思いますが、実際にはALT持続正常例にも肝癌が発症しているのです。そこで次に、発癌に関与している因子をALT持続正常例で検討したところ、最も関与しているのは膠質反応(ZTT)で、ZTTが異常な症例のリスクは約38倍でした。次いで、アルカリホスファターゼ(ALP)、血小板といった因子が関与していました(図5)。つまり、ALTが正常でもZTTが高く、血小板が低い男性は、将来肝癌を発症するリスクが非常に高いので、ALTだけでなく、こうした数値を参考に総合的に評価して治療適応を決める必要があると思われます。

図5 発癌に関与する因子(n=114)

(図5)発癌に関与する因子(n=114)

大垣市民病院

林  :ALT正常例で肝癌を発症したり、リンフォーマを発症した例を、多く経験しました。そのため、ALTが正常でも60歳以上の高齢者で血小板が低い患者さんは要注意だと考えています。吉岡先生はいかがですか。

吉岡:そうですね。ALT正常例で血小板が低い場合、実際に肝硬変になっているかどうかは肝生検しないとわかりませんから、結局肝硬変としてフォローせざるを得ません。しかし最近、非侵襲的に肝臓の硬さを評価できるFibro Scanという機械が開発されていますから、これが普及すれば、ある程度肝の線維化を推測することができ、高齢者の治療には役立つと考えています。

林  :そうですね。非侵襲的に線維化の評価ができれば、ALT正常例でも高齢で線維化が進展している症例は治療すべきであるという判断になるでしょうね。先ほど熊田先生が指摘された発癌因子にも肝の線維化に関係したマーカーが多いですね。

熊田:私もALT値の持続正常化を示していた症例からも発癌を経験しているので(図6)、ALT値だけに一喜一憂するのではなく、やはり総合的に判断することが重要だと思います。

図6 ALT持続正常で肝癌を発症した症例(63歳、女性)

(図6)ALT持続正常で肝癌を発症した症例(63歳、女性)

大垣市民病院

ALT持続正常例でも肝の線維化は確実に進展

林  :ALT持続正常例における線維化の進展を検討した結果が欧米から報告されています。そこで、そのうちのいくつかを紹介してください。

片野:2002年のMarcellinらの報告では、ALT異常例の線維化の進展は年率0.13ですが、ALT持続正常例では年率0.05とかなり低くなっています。ただし、2003年のJournal of Hepatologyには、ALT異常例とALT持続正常例における線維化の程度には有意差がない、という報告が掲載されています。したがって、線維化の進展の頻度は若干低くても、ALT持続正常例だからといって線維化が起こらないとはいえません。また、この報告ではF2症例に限って、その後の線維化の進展を検討していますが、持続正常例と異常例の間に全く差がなかったということですから、ALT持続正常例でも肝の線維化は確実に進展していると思われます。

林  :実際、外来でALT正常例を長期にわたって診ていますと血小板は確実に下がっていきます。したがって、進展速度は少し遅いのかもしれませんが、やはり確実に線維化は進展していると考えるべきでしょう。つまり、ALT正常例といっても10〜20年後に肝硬変あるいは肝癌を発症しないという保証は全くないわけです。

片野:線維化を加速させる因子としては、男性、アルコール、そして年齢も大きな因子になっていますから、高齢者ほど線維化の進展は早いと思われます。また、感染時の年齢もかなり影響しているようで、若年時に感染した場合は、20年間くらい線維化がみられない症例もありますが、40歳以上で感染すると線維化の進展が早いという報告もあります。

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