林 :AlbertiらはALT持続正常例に対する治療アルゴリズムを図7のように提唱していますが、本邦の学会には、ALT正常例はすぐには肝癌にならないから当分治療をしなくてもよいという意見がありました。しかし、片野先生がご指摘のように、たとえ進展速度が遅くても確実に線維化が起こり、高齢者ほど進展速度は早くなります。また熊田先生のご指摘のようにALT持続正常例でも、その後高率に肝機能が異常になり、肝癌を発症するということですから、この点を考慮した治療方針がガイドラインとして最近まとめられました。特にPEG-IFNα-2b/RBV併用療法の成績をみると、線維化が進展していない症例あるいはgradingが軽い症例ほどSVR率が高いので、早めに治療した方が有利なように思われますが、いかがですか。
図7 ALT持続正常例に対する治療アルゴリズム

Alberti A. et al, Journal of Hepatology 2005;42:266-274
熊田:10年経つとSVR率が8%下がるという報告もありますから、おっしゃるようにgradingが軽い段階で治療を始めるのが妥当と思われます。
林 :先ほどお示しした臨床薬理試験でも年齢によるSVR率の差は大きく、若い人のほうが圧倒的にSVR率は高いのです。したがって、感染が明らかな場合はすみやかに治療を受けることが大切だと思われます。
そこで次に、ALT持続正常例にどのような治療を行うかについてご意見を伺います。
熊田:我々は以前にALT持続正常例に対してIFN単独療法(24週)を行いました。対象は6ヵ月間に2回以上の検査を行いALT値が35IU/L以下の84症例(ジェノタイプ2;35例)です。その結果、SVR率は35.7%で、IFN単独療法ですので線維化が進行しないでgradingの高い症例ほど有効でした。
林 :我々もALT持続正常例にIFN単独療法を行っていますが、その結果をみると、SVR率はALT異常例とあまり差がなく、従来指摘されていたほど、持続正常例におけるSVR率が低いとは考えられません。
次に、ALT持続正常例に対するIFN/RBV併用療法の成績について解説してください。
片野:欧米の報告をみますとSVR率は40〜60%で、治療終了後にALTが上昇する例はほとんど報告されていません(図8)。したがって、IFN単独療法(図9)と比べると、治療終了後にALTが上昇する頻度はかなり少ないと思われます。またジェノタイプ2のSVR率は70〜80%という報告がありますので、ジェノタイプ2に関しては非常に優れた治療効果が示されています。
図8 ALT持続正常例に対するIFN+リバビリン併用療法

Alberti A. et al, Journal of Hepatology 2005;42:266-274
図9 ALT持続正常例に対するIFN単独療法

Alberti A. et al, Journal of Hepatology 2005;42:266-274
林 :海外の報告をみるとIFN単独療法よりIFNα-2b/RBV併用療法のほうがSVR率は高いということですが、本邦においてもALT持続正常例にはRBV併用療法のほうが有効だと思われますか。
熊田:従来、ALT正常例にIFN治療を行うとALTの悪化が懸念され「寝た子を起こす」といわれていましたが、欧米の結果をみますと、RBV併用療法では治療終了後にALTが上昇する頻度が非常に少ないので、本邦においてもRBV併用療法のほうが有効だと思います。
林 :RBV併用療法の成績としては、Gastroenterologyに掲載されたZeuzemらの報告が有名ですが、あの成績はどのように考えますか。
吉岡:SVR率は24週治療で約30%、48週治療で52%で、ALT異常例と差がありませんでした。治療後の悪化がみられなかった点が非常に印象的で、熊田先生がおっしゃるように、併用療法では「寝た子を起こす」心配がないと思われます。
林 :ジェノタイプ別にIFN/RBV併用療法のSVR率をみても基本的に慢性肝炎例と同じ傾向を示していますから、あのデータをみる限り、1年間の併用療法を行えばALT異常例と正常例のSVR率は、あまり差はない(図10)と思われますが、いかがでしょうか。
図10 ALT持続正常例と異常例に対するウイルス陰性化率の比較

1)Zeuzem S. et al, Gastroenterology 2004
2)Manns MP. et al, Lancet 2001
3)Fried MW. et al, NEJM 2002
熊田:そう思います。Zeuzemらは1st phaseと2nd phaseに分けてウイルス動態をみていますが、1st phaseにおけるウイルス動態はALT正常例も異常例も差がありませんでした。しかし2nd phaseではALT正常例におけるウイルスの減少がゆっくりとなるため、正常例には1年間の治療期間が必要であり、1年間併用療法を行えば正常例と異常例のSVR率はほとんど変わらないと指摘しています。つまり、ジェノタイプ1のALT正常例は、1年間の併用療法を行えば異常例とほぼ同等のSVR率が得られると考えられます。


