C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

C型慢性肝炎に対する新しい治療指針

治療ガイドライン2006発表、肝機能正常例にも積極的な治療を考慮

C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療の変遷

2001年12月、C型慢性肝炎に対するインターフェロンアルファ2b(IFNα-2b)とリバビリン(RBV)の24週併用療法が承認されて以来、本邦では毎年のように新しい治療法が承認されてきた(表1)。

表1 C型慢性肝炎に対するIFN療法の適応の変遷

(表1)C型慢性肝炎に対するIFN療法の適応の変遷

その結果、治癒率は年々飛躍的に向上し、特に本邦に多いジェノタイプ1bかつ高ウイルス量症例の治癒率は、インターフェロン(IFN)単独療法時代には5%であったが、PEG-IFNα-2bとRBV併用療法の導入によって59%まで上昇している(図1)。

図1 本邦のC型慢性肝炎に対するジェノタイプ別およびウイルス量別治癒率の年度別推移

(図1)本邦のC型慢性肝炎に対するジェノタイプ別およびウイルス量別治癒率の年度別推移

C型慢性肝炎に対する「治療ガイドライン2006」

本邦におけるC型慢性肝炎患者の多くは高齢者であり、2005年現在、60歳以上が約70%を占めている。そこで研究班では60歳以上の症例に対する各種IFN療法の有効性を検討し(表2)、最も治療効果が高い方法を第1選択(標準治療)とした以下のような治療ガイドラインを提唱している。
初回治療ではジェノタイプ1、2の高ウイルス量症例に対しては、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法、低ウイルス量症例に対してはIFN単独療法。再治療ではすべての症例に対してPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が、標準治療として推奨されている(詳細は座談会を参照)。

表2 高齢者C型慢性肝炎症例に対するIFN療法

(表2)高齢者C型慢性肝炎症例に対するIFN療法

肝機能正常例に対する治療ガイドライン

日常臨床で最も問題となるのが、かつて無症候性キャリアと呼ばれた肝機能正常例に対する治療である。欧米ではすでに肝機能正常例に対しても積極的に治療が行われ、その有効性が確立しているが、本邦においては確かな治療指針は示されていなかった。
そこで研究班では、過去にIFN療法を受けた肝機能正常例(血清ALT値が40IU/L以下の580例)における治療効果を検討したところ、IFN/RBV併用療法が有効であり(図2)、肝の線維化が進展していない(F0、F1) 症例においても高い治療効果が得られることが明らかになった。
一方、血清ALT値が30IU/L以下の群と31〜40IU/Lの群に二分して検討したところ、血清ALT値が30IU/L以下の群でも血小板数が15万/μL未満の場合は肝の線維化が進展している症例がかなり存在することが明らかになった。そこで研究班は「肝機能正常例に対しては血清ALT値と血小板数から治療の必要性を判断する」という新たな指針を提唱。例えば、血清ALT値が31〜40IU/Lで血小板数が15万/μL未満の症例には慢性肝炎治療に準ずるとしている(詳細は座談会を参照)。

図2 血清ALT値正常例のIFN単独とIFN/RBV併用療法の完全著効率

(図2)血清ALT値正常例のIFN単独とIFN/RBV併用療法の完全著効率

PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の非適応症例に対する治療ガイドライン

(写真)熊田博光氏

熊田 博光氏

すでに指摘したように、本邦におけるC型慢性肝炎患者は高齢者が多いため、合併症や副作用によってPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が行えない症例も多い。こうした症例に対して、研究班はIFN単独長期療法を推奨している。
具体的には、IFNの2週間連日投与あるいは週3回の間歇投与を行い、治療開始8週目にウイルスが消失した症例では、その後IFN間歇投与を2年間行って治癒を目指す。一方、ウイルスの消失がみられない症例にはIFNの6週間連日あるいは間歇投与を行い、ウイルスが消失した症例にはIFN間歇投与を2年間行って治癒を目指すが、ウイルスが消失しない症例に対しては、IFN長期少量間歇投与を行って、発癌の予防(維持目的)を目指した治療を行う。
厚生労働省の「人口動態統計」によると、本邦における肝癌による死亡数は、2003年度に初めて減少に転じたが、70、80歳代の肝癌はここ数年、急激に増加している。そこで極力肝癌の発生を抑制するため、研究班はC型慢性肝炎患者における血清ALT値の治療目標値を以下のように提唱している。

  1. grade1(F1)では、持続的に正常値の1.5倍以下にコントロールする。
  2. grade2、3(F2、F3)では、極力正常値にコントロールする。

新しい治療指針のポイント

以上のように、今回厚生労働省が示した新しい治療指針をみると、C型慢性肝炎治療において、現状ではPEG-IFNα-2b/RBV併用療法が最強の治療であり、この治療方法はしばらくの間、本邦における標準治療となると思われる。
一方、本邦には肝機能正常のC型ウイルス感染者が約50万人いるといわれ、その多くは開業医がフォローしている。したがって今回、肝機能正常例に対する治療指針が出たことをしっかりと認識し、治療が必要と思われる患者は肝臓専門医に紹介することが重要となる。報告を行った熊田氏は講演の最後に「本邦では通常、血清ALT値が40IU/L以下、施設によっては50IU/L以下を正常値としているが、30IU/L以上の場合は、血小板の数値いかんによっては治療の必要があることを示せたのが今回の報告の中で最も重要な点である。特に血清ALT値が30IU/L以上で、血小板数が15万/μL未満の症例には通常の慢性肝炎と同様の治療が必要であり、治療を行わないで放置すると、将来禍根を残すことになる」と述べた。

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