C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

シンポジウム・レポート(1)

C型慢性肝炎に関する最近の知見

カロリー制限と肥満解消の重要性

慢性肝炎における肝線維化の促進因子としては、飲酒、HBVあるいはHIVの重複感染などが知られているが、肥満、肝脂肪、インスリン抵抗性も促進因子であることが明らかになってきた。
C型慢性肝炎では脂質代謝異常が起こりやすいことはすでに知られており、特にジェノタイプ3aでは強い関連性があることが欧米から報告されている。しかし近年、本邦に最も多いジェノタイプ1bでも同様な脂質代謝異常が起こることが報告され、単に肝の脂肪化だけでなくアポリポ蛋白BおよびCが有意に低いことが明らかになっている。また、肝の脂肪化が進展すると、肝線維化の進行も速く、IFN療法の効果が低いことも分かってきた。つまり、肝の脂肪化は非常に重要な増悪因子である、といえる。
また、C型慢性肝炎症例では糖尿病を合併する例が多いといわれてきたが、HCVに感染するとインスリン抵抗性が惹起されることがマウスの実験で明らかになっている。インスリンは肝での糖の産生を抑制するが、HCVに感染すると糖産生の抑制が低下し、インスリン抵抗性が惹起される。その結果、糖尿病の発症と肝線維化の促進が起こるのである。こうした知見について東京大学大学院医学系研究科・生体防御腫瘍内科学教授の小池和彦氏は「F0、F1の症例でもすでにインスリン抵抗性が存在する。つまり、HCV感染症におけるインスリン抵抗性は肝障害の進展によるものではない。そこで、HOMA-IRは肝線維化の程度、および肝線維化進行速度の有意な独立予測因子になる、と考えられる」と述べた。

持続感染には自然免疫が関与

図 自然免疫と獲得免疫

(図)自然免疫と獲得免疫

従来、肝臓病には高蛋白・高カロリー食が推奨されてきたが、これはアルコール性肝障害の治療であり、C型慢性肝炎の治療においてはカロリー制限や肥満解消も重要な治療といえる。
C型慢性肝炎の治療は、ここ数年で大きく変わり、その臨床的効果は飛躍的に高くなっている。同時に、C型肝炎ウイルス(HCV)に関する基礎的データも蓄積されてきた。
HCVに感染するとまず急性肝炎が起こり、その内の約70%に持続感染がみられ、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌へと進展する。HCVが持続感染するためには、当然、免疫系から逃れなくてはならない。ヒトの免疫系には自然免疫と獲得免疫があり()、20世紀の免疫学では主に獲得免疫の研究が盛んであった。そのため、リンパ球を中心にHCVの持続感染メカニズムが研究され、HCVは変異することで免疫系から逃れていると考えられてきた。
しかし近年、自然免疫の研究が進むにつれて、HCVの持続感染を自然免疫との関係から検討した報告が増えてきた。例えば、細胞がウイルスに感染すると自然免疫系が活性化してIFNを産生するシグナルを出して初期感染の段階でウイルスを排除する。しかしHCVに感染するとある種のプロテアーゼ(NS3セリンプロテアーゼ)がつくられ、IFN産生シグナルが遮断されるため、HCV感染初期にウイルスの排除機構が働かなくなり、持続感染が起こる、という考え方がある。
一方、免疫療法で肝癌の細胞を排除しようという研究も進んでいる。肝癌の細胞は主に自然免疫の一種であるNK細胞が排除するが、C型慢性肝炎症例ではNK細胞が抑制状態になっている。そのため、C型肝硬変では肝癌が高率に起こってくる。そこで、抑制状態にあるNK細胞を何らかの作用で活性化できれば肝癌の発生を抑制することができる。実際、本邦でも大腸癌症例を対象に免疫療法が行われており、近い将来、肝癌症例に対しても免疫療法が始まるものと思われる。

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