C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

シンポジウム・レポート(2)

B型肝炎の現状と将来の展望

B型慢性肝炎における肝癌の発症率

B型慢性肝炎の治療目的は、肝硬変への進展および肝癌の発生を抑制することであるが、慢性肝炎における発癌率は年率0.5〜1%、肝硬変では年率3%といわれている。発癌リスクを考えるに当たり、非常に重要な因子はHBV DNA量であり、虎の門病院副院長の熊田博光氏は「持続陽性例だけでなく間歇的陽性例においても発癌リスクは高くなる。しかしHBV DNA陰性(<103.7)が3年以上持続した症例からの発癌はほとんどない」と述べた。
また、B型肝硬変では、血清ALT値持続正常例でも発癌リスクがあり、血清ALT値が3年以上持続して正常化している症例でも約20%の発癌率を確認している、と同氏は指摘した。

HBs抗原消失症例の長期予後

虎の門病院における治療でHBs抗原が消失した231例の予後をみると、肝癌が発生した症例はわずかに2例で(図1)、HBs抗原が消失した症例では、その78%が5年後にHBV DNA量を測定できなかったという。つまり、HBs抗原の陰性化あるいはHBV DNAの持続陰性化が起これば、肝癌を発症することは非常にまれであり、こうした状態にするのが、B型慢性肝炎に対する治療目標といえる。

図1 B型慢性肝炎1,310例の臨床経過

(図1)B型慢性肝炎1,310例の臨床経過

Arase Y et al:Am J Med;119(1),2006

B型慢性肝炎に対する治療方法

図2 ラミブジン投与例のHBVジェノタイプ別にみたHBe抗原陰性化率

(図2)ラミブジン投与例のHBVジェノタイプ別にみたHBe抗原陰性化率

提供:熊田博光氏

B型慢性肝炎に対する治療は、大きく分けるとIFNを中心とした抗ウイルス薬療法とステロイド薬を使った免疫賦活療法がある。現在、IFNの6カ月間投与が承認されているが、この治療で肝癌にならない3つの要因(HBe抗原陰性化、HBV DNA陰性化、血清ALT値の正常化)を満たす症例は約20%である。一方、1年間投与すると治療効果は約30%に上がることが治験の成績で明らかになっているため、「将来的には1年間の投与が標準治療になると思われる」と熊田氏は指摘した。
一方、本邦では2000年以降に核酸アナログ製剤による治療が始まり、現在、ラミブジンとアデホビルが使われており、近い将来にはエンテカビルの使用が可能になる。ラミブジンの投与については、治験段階では1年投与であったが、現在では長期投与が主流となっている。
虎の門病院におけるラミブジン長期投与の予後をジェノタイプ別にみると、ジェノタイプBでは4〜5年間の投与で約80%、ジェノタイプCでも7〜8年間の治療で約80%の症例でHBe抗原の陰性化がみられる(図2)。
この成績について同氏は「このように、ラミブジンは非常に有効な薬剤ではあるが、変異株が出現することが欠点で、特に変異株はHBe抗原陽性例に早期に出現し、年を追ってその割合は高くなる。また近年、首都圏を中心に増加傾向がみられるジェノタイプAは、変異株が高率に出現し、肝炎の悪化を招く」と述べた。
こうしたラミブジンの欠点を補うのが、昨年認可されたアデホビルで、実際、虎の門病院におけるラミブジン治療で、変異株がみられ肝機能が急激に悪化した症例もアデホビルの半年間投与によって血清ALT値は全例で正常になっている。また、アデホビルの投与によってHBe抗原が高率に陰性化することも同氏は確認している。
長期ラミブジン療法は肝硬変に対しても有効で、虎の門病院の成績をみると、ラミブジン投与後の発癌率は、ラミブジン未治療群と比して有意(P=0.01)に低い。しかし、変異株が出現した場合、特にHBe抗原陽性かつChild Cの症例ではbreakthrough hepatitisで重症化する可能性があるため、早期にアデホビルを併用することが重要である、と同氏は指摘した。
最後に熊田氏は以下のようにコメントして講演を終えた。「本邦におけるウイルス性肝癌、特にB型肝炎ウイルスによる肝細胞癌の発生率は、慢性肝炎あるいは肝硬変の段階で最も適切な治療を行えば、10年後には1/3に減少する。ただし、核酸アナログ製剤は使い始めると長期に使い続けなくてはならないため、若年者ではIFN療法を優先すべきだと思われる。また、核酸アナログ製剤を長期にわたって投与することは経済的にも大きな負担となる。したがって、今後は経済負担を軽減できる治療法の確立が必要となる」

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