C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

シンポジウム「難治性ウイルス肝炎に対する新しい治療の基礎的臨床的検討」より

PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の治療効果向上を目指して

ペグインターフェロンα-2b(PEG-IFNα-2b)とリバビリン(RBV)併用療法の導入により、C型慢性肝炎に対する治療効果が飛躍的に向上した。特に、日本人の患者の多くを占めるジェノタイプ1かつ高ウイルス量の難治症例に対し、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の48週間投与で50〜60%のウイルス学的著効(SVR)が得られることが報告されている。本シンポジウムでは、こうした難治性C型慢性肝炎に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用療法のSVR率向上を目指した治療戦略が報告された。

ALT正常例はALT異常例と同等あるいはそれ以上のSVR率


ALT持続正常HCVキャリア(ALT正常例)に対するIFN療法の適応に関しては、いまだ一定の見解は得られていない。また、C型慢性肝炎に対するIFN療法開始後12週目までにHCV RNAが陰性化すると、最終的にSVRとなる可能性が高いことが報告されている。
名古屋大学附属病院消化器内科の本多隆氏らは、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法を施行した580例中、投与開始後24週経過したジェノタイプ1かつ高ウイルス量209例を投与前ALT正常群57例と投与前ALT異常群152例の2群に分け、ウイルス学的効果を比較検討した。なお、ALT正常は「治療開始前3カ月以上の経過観察中にALTが3回以上、各施設基準値以下を持続したもの」と定義した。
その結果、ウイルス陰性化率は、治療開始後4週目は両群間に差はなかったが、4〜12週目にはALT正常群54.4%、ALT異常群44.7%となった。また、24週目ではALT異常群で12.5%の症例が陰性化しなかったが、ALT正常群は全例が陰性化した。
次に、ALT正常群とALT異常群の推定SVR率を求めるため、国内臨床開発試験の結果をもとに、4週目までにウイルス陰性化が得られた症例のSVR率を100%、4〜12週目にウイルス陰性化が得られた症例のSVR率を71.1%、12〜24週目36.4%、24週目以降0%と仮定すると、ALT正常群全体の推定SVR率は65.5%となり、同様に推測したALT異常群全体の55.9%より高値だった。
本多氏は「今後、最終的なウイルス学的効果に関する検討が必要であるが、ALT正常例において、治療開始後12週目のウイルス陰性化率がALT異常例より高い傾向が認められたことから、ALT異常例と同等あるいはそれ以上のSVR率が得られる可能性がある」と述べた。

高齢者ではCL/Fに基づくRBV投与量とPEG-IFN1.0μg/kgの併用を

難治性のC型慢性肝炎は、実際には高齢者が多く、効果や副作用の点から治療の工夫が求められている。
武蔵野赤十字病院消化器科の朝比奈靖浩氏らは、高齢者難治例に対する個別化最適療法を探るため、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法を施行したジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例253例のうち、投与終了後12週目まで経過観察した93例を対象に、投与終了後12週の時点でHCV RNAが陰性化した例をSVRとして、以下の検討を行った。
まず、SVRに関与する因子を多変量解析で検討すると、年齢(60歳以上・未満)と投与後12週時点でのウイルス陰性化の有無であることが確認された。
次に、60歳以上52例と60歳未満32例に分け、ウイルス量が治療前値から2log低下した達成率の推移を比較したところ、2log低下が達成されればSVR率が60歳未満群で76%期待されるが、60歳以上群では33%しか期待できなかった。ウイルス陰性化率も、投与後12週時点で60歳未満群は61.5%、60歳以上群では43.8%であり、また、60歳以上群では60歳未満群に比べてウイルスの陰性化が遅れて認められた。ここで注目されるのは、治療継続により48週目には60歳以上群でも83.3%の症例でウイルス陰性化が認められたことである。したがって、治療後の再燃を減少させることが重要であり、その1つの方法として、より長期の治療継続が必要と考えられた。
ただし、高齢者例ではPEG-IFNα-2bおよびRBVの投与中止率が高いという問題がある。そこで同氏らは、高齢者例でのPEG-IFNα-2b/RBV併用療法をより長期に継続させるため、2つの工夫を行っている。1つは、RBV投与量を全身クリアランス(CL/F)に基づいて設定することである。これにより、体重別設定に比べ血中濃度がより至適濃度範囲に入る例が多くなった。もう1つは、PEG-IFNα-2bの投与量を1.0μg/kgとすることである。これらの工夫により、体重別設定で投与した場合あるいは1.5μg/kgを投与した場合に比べ、ウイルス学的効果を維持しつつ、両剤の減量・中止率を低下させることができたことから、同氏は「年齢を考慮した個別化治療が有用である」と述べた。

治療前の因子や治療反応性を考慮した治療方針が重要

PEG-IFNα-2b/RBV併用療法によるSVR率向上のためには、治療反応性から見た効果予測に基づく個別の治療方針が必要である。こうした観点から、大阪大学大学院消化器内科学の平松直樹氏らは、多施設共同研究によりPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を24週以上施行したジェノタイプ1かつ高ウイルス量のC型慢性肝炎628例を対象に、まず、治療開始2週および4週時のHCV RNA量減少率から12週および24週時のウイルス陰性化率を予測した。その結果、2週時にHCV RNA量が治療前値から2log以上低下した症例では、24週時の陰性化率は95.4%と高く、逆に4週時に1log以上低下しなかった症例では、24週時の陰性化率は9.6%と予測された。
次に、治療開始12〜24週でのウイルス陰性化に寄与する因子を検討すると、高齢者、女性、線維化進展例、血小板低値例、治療前超高ウイルス量例、クレアチニン低値例では治療開始12〜24週にウイルスが陰性化するLate viral responderが多かった。
一方、同氏らは現在、RBVの貧血中止予測としてRBV早期減量基準を用いた減量法(「2by2基準」)の有用性をプロスペクティブスタディにより検証している。「2by2基準」とは、治療開始2週時のヘモグロビン(Hb)値が治療前より2.0g/dL以上低下する症例を2by2陽性と規定し、RBVを200mg減量するというもの。これまでに、高齢者ではRBV貧血中止を抑止する可能性が示唆されている。平松氏は「画一的な治療ではなく、治療前の因子や治療反応性を考慮した治療方針決定が重要である」と強調した。

シクロスポリンはトラフ値200ng/mL未満で安全に併用可能

最近、免疫抑制薬シクロスポリン(CsA)が、C型慢性肝炎に対してウイルス学的効果を示唆することが国内外から報告されている。京都府立医科大学大学院消化器病態制御学の伊藤義人氏らは、ジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対するPEG-IFNα-2b /RBV併用療法において、治療開始後12週目までにウイルス学的効果を得ることを目的に、CsA3mg/kg/日を12週間併用投与した。
その結果、肝組織がF2(線維性架橋形成)/A3(高度の壊死・炎症所見)のPEG-IFNα-2b/RBV併用療法再燃症例では、治療開始とともにALTは低下し、10週目にウイルスが陰性化した。経過観察3カ月目の現在、再燃は認められていない。一方、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法無効例で、F4(肝硬変)/A3に進展した2症例ではALTは正常化したが、陰性化は得られなかった。F3(小葉のひずみを伴う線維性架橋形成)/A2(中等度の壊死・炎症所見)の症例では、ALTの正常化、ウイルス陰性化はともにみられなかった。
CsAの適切な投与量を決定するためのトラフ値(次回投与前の最低血中濃度)は、肝硬変に進展した1例で200ng/mLを超えたため減量したが、他の症例では100〜200ng/mLで良好にコントロール可能であった。なお、問題となる副作用は見られなかった。
伊藤氏は「CsAの併用投与が、ウイルス学的効果を得るために有用であるかはさらなる検討が必要であるが、トラフ値が200ng/mL未満の範囲では安全に併用できると考えられる。ただ、肝線維化進展例ではCsAの減量を念頭に置く必要がある」と指摘した。

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