C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

一般演題「C型肝炎病態」より

治療適応となる血清トランスアミナーゼ値を再評価

C型慢性肝炎患者の高齢化が進むわが国では、時期を逸しない適切な治療開始が望まれている。C型慢性肝炎に対する治療適応の基準として、血清トランスアミナーゼ値が最も重視されるが、インターフェロン(IFN)治療によりウイルス学的著効(SVR)が得られた症例では、基準値以下になるケースが多い。こうしたことから、治療適応となる血清トランスアミナーゼ値の再評価が求められている。

SVR例からAST25IU/L以下、ALT20IU/L以下を基準値として提示

血清トランスアミナーゼの基準値は施設間で違いが見られるものの、35〜45IU/L以下とされている。国立病院機構東京病院消化器科の矢倉道泰氏らは、C型慢性肝炎SVR例における血清トランスアミナーゼ値の分析からAST・ALT基準値の新たな指標を提示、また、無治療経過観察中のいわゆる無症候性HCVキャリア(ASC)のALTを再評価することにより、肝機能異常として治療が必要とされるALTの値を報告した。
まず、同施設において、IFN治療でSVRとなった経過観察可能な105例を対象に、SVR確定時期(投与終了6カ月後)から1年以上経過した時点で連続3回のAST・ALTの平均値を求めて各例の値とし、さらに性別、年齢別および全例の平均値を算出した。
その結果、全例の平均値はAST19±3IU/L、ALT13.8±3.1IU/L。また、年齢別でASTが一番高かったのは50歳代(n=24)の20.3±3.5IU/L、ALTでは40歳代(n=9)の14.2±3.5IU/Lであったことから、矢倉氏は、「AST25IU/L以下、ALT20IU/L以下が基準値として妥当ではないか」と述べた。
次に、同施設におけるALT34IU/L以下のASC41例を、20IU/L≧群(n=10)と21〜34IU/L群(n=31)の2群に分け、血清アルブミン(Alb)値、膠質反応(ZTT)、血小板数の推移を比較した。
その結果、20IU/L≧群では観察期間(平均7.1±5.1年)中にAlb値、ZTT、血小板数に有意な変化は認められなかったが、21〜34IU/L群では観察期間(平均7.9±4年)中にAlb値の有意(p<0.0001)な低下が認められた。また、21〜34IU/L群において6例に生検が行われ、うち1例が肝線維化ステージF1からF2へ悪化した。
以上から矢倉氏は、「ALT21〜34IU/Lを示すASCは、肝機能異常として治療すべき対象と考えられる」と指摘した。

治療適応の検討に有用な「潜在基準値抽出法」

大垣市民病院消化器科の熊田卓氏らは、観察開始時のALTが基準値内であったC型慢性肝炎症例に対し、「潜在基準値抽出法」を用いて治療の適応を検討した。同法は、患者集団から基準値を求める方法の1つであり、同時に測定される幾つかの検査項目を手掛かりに、基準値としてふさわしい数値を選択的に抽出する方法である。
対象は、同施設受診のHCVキャリア(HCV RNA陽性またはHCV抗体力価10.0以上)3,500例のうち、1)観察開始時から1年間のALTが35IU/L以下、2)観察期間が3年以上でALTを6回以上測定、3)観察開始時に肝細胞癌がない、4)IFNの投与がない−の4条件を満たした343例。
これらの症例に対して同法を用い、ALTに関連して数値が変動しやすいAST(40IU/L以下)、γGTP(56IU/L以下)、LDH(250IU/L以下)、ALP(338IU/L以下)、アルブミン(3.5g/dL以上)、総コレステロール(130mg/dL以上)、ZTT(12.0U以下)、血小板数(12.0×104/μL以上)のすべてが基準値内にある症例をhealthy normal ALT群(HN群;159例)とし、いずれか1つでも基準値から外れる症例をnon-healthy normal ALT群(NN群;184例)として、経過観察中のALT異常の出現率、肝細胞癌発生率の検討を行った。
背景因子は、両群とも男性が多く、年齢はHN群が有意(p<0.0001)に若く、ウイルス量はHN群が有意(p<0.05)に低かった。ALTは、HN群20IU/L、NN群21IU/Lで、有意差はなかった。
その結果、HN群とNN群におけるALTの異常出現率は、NN群がハザード比1.264(0.926-1.726、p=0.140)とやや高く、肝細胞癌発生率はNN群が同3.827(1.288-11.375、p=0.016)と有意に高かった。
以上のことから熊田氏は、「ALT異常出現の予測は必ずしも十分ではないが、NN群では肝細胞癌発生のリスク比が3.827倍で、IFN治療の考慮が必要なことから、潜在基準値抽出法を用いた治療適応の検討は有用と考えられる」と述べた。

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