講演2

演者:朝比奈 靖浩氏
武蔵野赤十字病院 消化器科
既に当院では、253例のジェノタイプ1かつ高ウイルス量症例に対してPEG-IFNα-2b/RBV併用療法(48週)を行っている。その患者背景をみると、高齢者、線維化が進展した症例、過去の治療での無効例といった難治例が非常に多く含まれているが、その治療成績は治療終了時のウイルス陰性化率は77.4%、SVR率は48.4%であり、CHC500の成績とほぼ同じである。
一般に、60歳以上の高齢者あるいは治療開始12週までにウイルスの陰性化(EVR)がみられなかった症例のSVR率は低いといわれている。実際、当院の症例でもEVRがみられた症例は、その61%がSVRになるが、みられなかった症例では1例もSVRが得られていない。また、高齢者になるほどウイルスの陰性化時期が遅くなり、さらにEVRがみられた60歳未満の症例では76%がSVRを得られるが、60歳以上の高齢者では33%と非常に低くなる。また、現在当院で治療中の症例におけるウイルスの消失時期とSVR率の関係をみると、EVRがみられた症例は全体の55.4%、late responder(治療開始13週目以降にウイルスが陰性化した症例)は26.5%となっており、SVR率は前者が71.7%と非常に高いが、後者は36.4%であった。つまり、高齢者の多くはlate responderで再燃率も高いので、そのSVR率を高めることが今後の重要な課題といえる。
late responderに対する長期併用療法の有効性
近年、治療開始12週後におけるウイルス陽性例は、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法の48週間治療よりも72週間治療の方がSVR率は有意に高くなることが報告されている。また、PEG-IFNα/RBV併用療法を24週間行い、ウイルスの陰性化がみられた症例をPEG-IFNα/RBV併用療法群とPEG-IFNα単独療法群に分けてその再燃率を検討した報告をみると、単独療法群の方が再燃率は有意に高いことが明らかになっている(図4)。つまり、late responderが多く、さらに再燃率も高い高齢者にはPEG-IFNα-2b/RBV併用療法の長期治療が有効と考えられ、本邦でも検討する必要がある。
図4 PEG-IFNα/RBV併用療法24週時ウイルス陰性化例におけるその後の治療法別再燃率の比較

Bronowicki JP.et al.:AASLD 2002
高齢者における減量・中止率をいかに下げるか
高齢者に長期間の併用療法を行うためには、減量・中止率を下げることが大きなポイントになる。実際、当院において治療中止に至った症例は8.3%で、そのすべてが60歳以上の高齢者である。そこで本院では、高齢者に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行うにあたり、いくつかの工夫を行っている。その1つがRBVの初期投与量を一般的なbody weight base(BW-base)で決めるのではなく、全身クリアランス(CL/F)で決めている点である。CL/FでRBVの投与量を決めると、治療開始4週目のRBVの血中濃度は、女性や高齢者でも至適血中濃度が得られ、特に60歳以上の治療中止例が有意に減少する(図5)。一方、ウイルス陰性化率は、BW-baseで投与量を決めた群に比して良好な結果であった(図6)。
もう1つの工夫はPEG-IFNα-2bの投与量を最初から1.0μg/kgに減量することである。その結果、高齢者の減量・中止率は低くなり、特に中止率は1.5μg/kg投与群の半分になった。
図5 60歳以上における投与設定方法別減量・中止率

武蔵野赤十字病院
図6 投与設定方法別のウイルス陰性化率

武蔵野赤十字病院
PEG-IFNα-2bはウイルスを直接抑制する薬剤のため、その投与量を減らすとSVR率が低くなることが危惧される。そこで、血中ウイルスのダイナミクスを検討したところ、ウイルス減少のスピードは1.5μg/kg投与群と1.0μg/kg投与群にほとんど差がなく、第1相(治療初期にみられるウイルスの急激な減少)では若干1.5μg/kg投与群の方が良好だが、第2相(第1相に続く緩徐なウイルスの減少)ではむしろ1.0μg/kg投与群の方が良好であった(図7)。
図7 PEG-IFNα-2b投与量別ウイルスダイナミクス

武蔵野赤十字病院
ジェノタイプ2に対するPEG-IFNα-2b/RBV併用療法(24週間)の臨床試験の成績をみると、PEG-IFNα-2b/RBV併用群のSVR率は87.3%であるが、IFNα-2b/RBV併用群では77.0%であった。この10.3%の差は、減量・休薬・中止症例におけるSVR率の差に原因がある。そこで、両群における中止時期を比較したところ、PEG-IFNα-2bの方が早期中止例は少ないことが明らかになった。つまり、PEG-IFNα-2b投与例では、中止に至ってもほぼ治療を完遂できている症例が多いのである。
ジェノタイプ2においても、SVRが得られないとジェノタイプ1と同様に肝がんが発症することが知られており、ジェノタイプにかかわらずC型肝炎治療は完遂することが重要である。PEG-IFNα-2bは単に患者さんのコンプライアンスを改善するだけでなく、治療を完遂できるという意味からもより有効な薬剤といえる。


